Q : タンパク質とは何ですか?
A : タンパク質とは、ヒトや動物、その他の生体内における何がしかの機能を持った最終的な機能性物資であと定義することができます。タンパク質は、アミノ酸で作られています。脂質、炭水化物とは異なる生体内の成分です。タンパク質の持つ機能を医薬品としたものが、バイオロジクスです。タンパク質の設計図は、メッセンジャーRNA (mRNA)です。mRNAはDNAを鋳型としてコビーされます。DNAは、細胞の核に保存されています。
Q : タンパク質精製用のLab(実験室)の準備について教えてください
A : 目的のタンパク質の生産がどの細胞であるか,そのタンパク質は分泌系か否か,などにより準備する装置は異なってくる.
フロー
材料
ストックバッファー
精製検討の実際
Eco-Study
Q : タンパク質濃度はどうやって求めますか?
A : タンパク質はアミノ基をもっているので,その特性,すなわちA280nmに高い紫外線波長の吸収を持つことを利用してタンパク質の濃度を求めます.
最も簡単な方法は,分光高度計を用いた方法です.そのほか,高感度測定法として「ローリー法」などがあります.化学反応により発色させてから,その色を同様に分光高度計で測定するため,高感度となります.
分光高度計の測定波長A280nmを用いた測定方法については,以下のリンクを参照できます.
Q : タンパク質の精製を始める前に、そのタンパク質についてよく考える必要があるのですか?
A : まず、精製品として取得したいタンパク質を精製するには、そのタンパク質自体の情報を理解する必要があります。分子量、アミノ酸配列、精製機材としてのレジンとして特異的なレジンがあるか、そして、3D立体構造を知ることは、精製に関わる挙動をイマジネーションすることができます。
分子量はどれくらいか
精製しようとしているタンパク質の物性について知ることから始めます。
100kDaを超えると大きい分子と認識します。もしもRefoldingが必要な場合、このような高分子でのRefoldingは期待薄です。できたとしても、その歩留まりは非常に低いはずです。
Refoldingが可能なタンパク質の分子量は、一般的に30kDa以下です。それ以上になると、分子量の増加とともにRefolding効率が低下してきます。
アミノ酸配列情報
等電点はどれくらいか
イオン交換体の精製を考える場合に、その等電点を知ることは、陰イオン交換体を使用できるのか、陽イオン交換体を使用できるのか、まずは、大雑把に判断するために必要な情報です。
ウイルスや核酸は、負電荷が強いので、陰イオン交換体による吸着/溶出法が使用できます。IgGの場合、そのpIは、中性から塩基性であることが多いので、その場合には、その抗体のpIを超えないpHのバッファー組成で、陰イオン交換クロマトグラフィを実施できます。IgGはパススルーしますが、その他、pIが低い不純物質は、吸着するので精製されるわけです。
疎水性はどれくらいか
分子量が大きくなるにつれて、疎水性は一般的に高くなります。大きな分子であれば疏水クロマトが使用できるでしょう。IgGの分子量は、150kDaなので、疎水クロマトが使用できます。
疎水性が強ければ、塩析による沈殿化も容易です。容易ということは、沈殿化によるロスに注意を払う必要もあるということです。
ただ、疎水クロマトでは、疎水レジンであっても吸着容量がイオン交換クロマトグラフィと比較して低くなるし、高分子であるほど吸着容量は低下することを考慮する必要があります。
特異的な精製は使用可能か
アフィニティ精製
抗体の精製のようにProtein Aレジンによる精製が可能なら使用すれば、初期精製の苦労を回避できます。文明の力は使いましょう。そのために、試薬メーカーが開発してくれています。
AAVのアフィニティ・レジンも開発されています。使用しない手はないでしょう。
血液凝固系のタンパク質は、もっぱらヘパリン親和性を持っています。ヘパリン・レジンを使えるかも知れません。
精製タグによる精製
ラボでの精製をしやすくするために、N末またはC末にHistidine x 6を付加して、Niカラムで精製が可能にデザインすることがあります。Imidazoleの濃度で溶出できますが、おそらくHistidineでも溶出は可能なはずです。一般的には、Histidineで溶出することはないようです。私は、見たことがありません。
最適なImidazole濃度は、必要十分な濃度を知ることが重要です。薄すぎると回収率が低下し、高すぎると不純物が多くなりがちです。ただし、この工程は、キャプチャリングなので、後の精製工程の能力が高ければ、Imidazole濃度については、それほど厳密な設定は必要ないでしょう。
編集履歴
2020/11/22 Harikiri(Mr) 2021/05/02
Q : タンパク質の沈澱化による精製とは?
A : タンパク質の疎水性(そすいせい)という性質を利用して、添加剤の種類と濃度、およびpHを調整することで、沈殿になるものと上清に可溶性として残るものとに分離することで、目的タンパク質の純度を高める精製の手法です。
ただし、分離能力はそれほど高くありません。
以下の基礎知識を活用します。
血漿タンパク質を,この沈殿法で精製できます.一般的には,以下のような条件で沈殿化させて濃縮精製が可能です.
IgGの場合,33%飽和硫酸アンモニウムで沈殿化させて,遠心分離機で沈殿画分を取得します.
Refoldingは、大腸菌によるバイオロジクス製造に欠かせない技術です.
大腸菌でタンパク質を発言させると,そのタンパク質は,正常な立体構造にならないことがほとんどです.大腸菌は,タンパク質のFolding能力が低いためです.
タンパク質のRefolding技術は、組換え大腸菌(E.coli)を生産宿主として使用する場合、必須の技術となります。
大腸菌の菌体内で合成されたタンパク質は、動物細胞の場合のように、フォールディングがうまく行きません。立体構造がネイティブな構造になり難いのです。フォールディングの容易性は、分子量の大きさと、ほとんどとレイドオフの関係にあります。大きな分子量のタンパク質であるほどフォールディングがうまく行かず、立体構造があるべき姿にならないという、折り畳みのミスが各所で生じます。それは、それぞれのタンパク質ドメインによる相互干渉によるものと考えられますが、SS結合のミス結合も同時に起きやすいことも大きくてな理由の一つです。
フォールディングのステップ
タンパク質のフォールディングにおいて、まず重要なことは、分子内のSS結合は、立体構造が安定してから、最後に結ばれるのが正しい順序です。例えば、早々に、明後日(あさって)のペアでのシステイン同士が結合してSS結合を形成してしまうと、それは、もう正しい立体構造にはなり得ません。最後の最後に正しい立体構造になってから、その後に隣り合うシステイン同士がSS結合を形成することで、タンパク質は安定な物質になります。
このFAQは、バイオロジクスについて初学者を対象にしています。バイオロジクスは、低分子医薬品と異なり、直接的な合成には関わらず、生物に合成させる技術、すなわち、遺伝子組換え技術の使用を基本としています。開発に要する費用は、低分子と比較して1桁高額です。世界の医薬品は、バイオロジクが売上のほとんどを占めています。低分子医薬品は無くなることはありませんが、バイオロジクスは、今後も遺伝子治療のように、モダリティを変えながら拡大していくことは誰も否定はしないでしょう。
編集履歴 2020/11/16 Harikiri(Mr)編集開始 2021/02/13 追加 (イオン交換クロマトグラフィの原理) 2021/04/20 追記 (Refoldingとは何ですか) 2022/10/26 修正 (FAQプラグイン「Quick and Easy FAQs」を取りやめて、WordPress標準のFAQ機能を使用するこにした) 2022/10/30 追記 (タンパク質濃度はどうやって求めますか?,Lab(実験室)の準備)