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  • [Vaccine] 世界で開発された 新型コロナウイルス用ワクチンの有効性 – Pfizer, Moderna, Astrazeneca, Sinovac [2021/06/15]

    [Vaccine] 世界で開発された 新型コロナウイルス用ワクチンの有効性 – Pfizer, Moderna, Astrazeneca, Sinovac [2021/06/15]

    はじめに

    変異株は、イギリス株に加えインド株(デルタ株)が、感染力が良いため、感染拡大の問題が明らかになってきました。イギリスでは、国民全体にワクチン接種を早期に完了させることを戦略として、2回摂取までの間隔を長くすることで感染の進行を抑えてきました。ここに来て、インド由来の変異株であるデルタ株の感染が増加しており、市中感染においてデルタ株に殆どが置きかわっているとされます。2回摂取の必要性が明らかに成りつつあります (NHK News, 2021/06/14)。

    • 2021/05/23, インド変異株(デルタ株)に対する有効性について、1摂取では、AstrazenecaとPfizerとも33%, 2回摂取でAstrazenecaは60%, Pfizerは88%であると、イングランド公衆衛生庁(PHE)が発表, BBC News(ファイザー製とアストラゼネカ製ワクチン、2回接種でインド型変異株に有効=英研究, 2021/05/23))

    各社のワクチン

    新型コロナウイルスに対するワクチンは、世界で開発が進められています。最も進んでいるワクチンは、第3相の臨床試験の結果が既に得られており、その有効性が確認されています。

    開発を先行している製薬会社として、アメリカのPfizerとModerna、およびイギリスのAstrazenecaの3社の有効性について比較した表を以下に示します (ひるおび, TV, 2020/12/01, 一部改変)。

    表1. mRNAワクチンとウイルス・ベクター・ワクチンの比較

    項目PfizerModernaAstrazenecaJannsen
    企業国アメリカアメリカイギリス
    ワクチンタイプmRNAmRNAAdenovirus VectormRNA
    有効性
    (第3相臨床試験)
    95%94.1%平均70%
    最高90%
    重症化への抑制率は、80%程度
    摂取2回2回2回1回
    保存条件-80 ~ -60℃, ~ 半年
    2 ~ 8℃ (5days)
    – 20℃, ~ 半年
    2 ~ 8℃ (30days)
    2 ~ 8℃ (半年以上)
    日本への供給国内での審査/承認は、早くても2021/02~03,
    ~ 2021/06
    (6,000万人分)
    ~ 2021/09
    (2,500万人分)
    2021 ~
    (6,000万人分)
    N/A
    アメリカでの提供2020/12/11, FDAは緊急使用を認めた(emergency use authorization (EUA)*1)2020/12/01, アメリカでの緊急使用を申請
    提供国イギリス(2020/12/07= (予想)), EUU.S.EUスペイン
    臨床2020/11/8
    副作用血栓が危惧されている

    *1: EUAのマイルストーンを達成

    • 一次有効性分析は、BNT162b2が初回投与の28日後にCOVID-19に対して95%有効であることを示した; 170の確認されたCOVID-19の症例が評価され、プラセボ群で162例、ワクチン群で8例が観察された。
    • 有効性は、年齢、性別、人種、民族の人口統計全体で一貫していた
    • 65歳以上の成人で観察された有効性は94%以上
    • 米国食品医薬品局(FDA)が緊急使用許可(EUA)に要求する安全性データのマイルストーンが達成された
    • データは、43,000人以上の参加者が登録されたすべての集団でワクチンが十分に許容されたことを示している。
    • 重大な安全上の懸念は観察されなかった。
    • 頻度が2%を超える唯一のグレード3の有害事象は、3.8%の倦怠感と2.0%の頭痛であった
    • pfizerは、EUAのために数日以内にFDAに提出し、世界中の他の規制当局とデータを共有することを計画している
    • 両社は、2020年に世界で最大5,000万回のワクチンを製造し、2021年末までに最大13億回のワクチンを製造する予定
    • pfizerは、ワクチンを世界中に配布するための豊富な経験、専門知識、および既存のコールドチェーンインフラストラクチャに自信を持ってる

    PFIZER AND BIONTECH CONCLUDE PHASE 3 STUDY OF COVID-19 VACCINE CANDIDATE, MEETING ALL PRIMARY EFFICACY ENDPOINTS

    https://www.pfizer.com/news/press-release/press-release-detail/pfizer-and-biontech-conclude-phase-3-study-covid-19-vaccine

    1回の接種で済むジョンソン・エンド・ジョンソンの新型コロナワクチンは米国で3月に配布開始の見込み

    https://jp.techcrunch.com/2021/01/30/2021-01-29-johnson-johnsons-covid-19-vaccine-is-85-effective-against-severe-cases-and-66-effective-overall-per-trial-data/?guccounter=1&guce_referrer=aHR0cHM6Ly93d3cuZ29vZ2xlLmNvLmpwLw&guce_referrer_sig=AQAAAHWrulzT5dtNkepyOEfFTC-ncFJkYJ_Qu2Dr4Hsfximdft7bNNibxg4ZE-mkWPLZUrbi2CHc68WnFCOudaD31tU8K7fPJJvbVHlmP7KyKY114TuFC4ZnirWqr58xYKq2jlg2XE_ve15FNnkOkdEJRKuzXCJ2YK5kMCfejJNGtfdT

    評価

    当初、僕が最初に調査した時は、核酸ワクチンと比較して、ウイルス・ベクターの方が免疫賦活化効果が高いのではないかという印象がありました。ところが、今回の2種類のmRNAワクチンと1種類のウイルス・ベクター・ワクチンとで、有効性に違いが見られました。mRNAワクチンの方が高いという結果です(表1)。いずれのモダリティーも新しいモダリティーであり、世の中には、まだ存在しない医薬品です。今後も、それぞれのモダリティーにおいても改良が加えられた製品が出て来ますが、ワクチン効果としての有効性が、本当にmRNAワクチンに軍配が上がるのかは、もう少し待ってみようと思います。

    *有効性: ワクチンを摂取しても感染するヒトがいますし、当然、ワクチンを打っていなければ、その感染率は更に高いはずです。有効性とは、ワクチンを摂取した群での感染者数が5人であったとき、ワクチンを摂取していない群での感染者数が100である場合に、有効性は、95%になります。100人、5人では、統計学的に信頼性が低いので、データとして信頼性が高くなるように、第3相臨床試験では、全体の試験に参加するボランティアは4万人程度、そこから、偽薬とワクチンのそれぞれの群に2万人ずつに群分けして、臨床試験が実施されます。それぞれの群で、発症した患者数を比較します。

    その他

    CoronaVac (by SinoVac)

    • 中国、シノバックのCOVID-19ワクチン(CoronaVac)は、Vero細胞で増やして不活化処理した不活化ワクチンです。ブラジルのサンパウロで使用され、その有効性は、50.4%であると報じられています。
    • Virus strain (ウイルス株) : CZ02
    • Adjuvant (アジュバント) : Aluminum Hydroxide
    • Excipients (添加剤) : リン酸水素2Na (12水和物), リン酸2水素Na, NaCl
    • milky-white suspension

    NIKKEI Asia – Sinovac vaccine disappoints at 50.4% efficacy: latest Brazil data – 2021/01/13

    https://asia.nikkei.com/Spotlight/Coronavirus/Sinovac-vaccine-disappoints-at-50.4-efficacy-latest-Brazil-data

    COVID-19 Vaccine (Vero Cell), Inactivated (Brief Edition), 薬剤名 : CoronaVac

    https://www.fhb.gov.hk/download/our_work/health/201200/e_PI_CoronaVac_brief.pdf

    tozinameran (by Pfizer-BioNTech)

    • PfizerのCOVID-19ワクチンの副作用のうち、アナフィラキシーショックは、1/100万人と通常のワクチンに比べて若干高いが、死亡例は報告されていない。日本でも投与が開始間近かとなり、投与後に通常15分、アナフィラキシー既往者の場合は30分の観察の実施により万全が尽くされる(2021/02/15)
    • Brand name : Pfizer-BIoNTech COVID-19 Vaccine
    • Company name : BioNTech Manufacturing GmbH
    • Ingredient : tozinameran

    Pfizer-BioNTech COVID-19 Vaccine (tozinameran) – Government of Canada –

    https://covid-vaccine.canada.ca/pfizer-biontech-covid-19-vaccine/product-details

    編集履歴

    2020/12/01 Harikiri(Mr)
    2020/12/02 追記(評価、有効性)
    2021/01/13 シノバック
    2021/05/11 追記 (SinoVacとPfizer-BioNTechのCovid-19ワクチンの薬剤情報)
    2021/06/15,追記 (イギリスでは、インドの変異株は置き換わっている)
  • [Vc] アデノウイルス・ベクター・ワクチンとは – 新型コロナウイルスのワクチン開発で威力を発揮する – 必要な遺伝子のみを残す試行錯誤で、現在は第三世代  [2021/02/26]

    [Vc] アデノウイルス・ベクター・ワクチンとは – 新型コロナウイルスのワクチン開発で威力を発揮する – 必要な遺伝子のみを残す試行錯誤で、現在は第三世代 [2021/02/26]

    アデノウイルス・ワクチン

    アデノウイルス(adenovirus)を利用した治療薬の代表は、遺伝子治療薬です。adenovirusを用いた研究は歴史があり、遺伝子治療用のadenovirusは、最新世代の改変型adenovirusが使用されています。

    使用されるワクチン用のadenovirusは、目的に適した改変adenovirusが使用されるはずですが、前世代adenovirusが使用されているようです。この部分は、十分に把握できていないので、今後の調査を進めたいと思っています。

    アデノウイルス・ベクターを使ったワクチンとして代表的なものは、やはり、Astrazeneca社のCOVID-19ワクチンです。2021年中には、日本でも集団摂取が予定されています。Astrazeneca社のワクチンに関する情報は、後半に述べています。

    adenovirusのウイルス膜表面に、目的の抗体を作りたいウイルスの膜表面タンパク質を発現さたり、ベクターとして組み込んだ遺伝子に目的のタンパク質を発現させることも可能です。現在、新型コロナウイルスのワクチンとしてAstrazenecaの臨床試験が行われているadenovirus vector vaccineがあります(2020)、mRNAなどの核酸ワクチンと比較して、細胞免疫を惹起するため強いワクチン効果が期待できます。ただし、ワクチン効果以外の服反応も起こるため、免疫獲得として摂取できる回数は少ない数回に限定されます。核酸ワクチンの場合は、副次的な反応が理論上はないため、複数回の免疫が可能です。抗体ができるまで、複数の免疫も可能と考えられます(2020/09/08)。

    adenovirus vector vaccine (アデノウイルス・ワクチン)は、核酸ワクチンの原理と比較して、抗原提示に関するT細胞の免疫応答が強まる(細胞免疫)、感染細胞への殺傷効果が高い可能性があることから、よりワクチン効果が高い期待があります source: Adenoviral Vector-Based Vaccines and Gene Therapies: Current Status and Future Prospects, 2018

    上記参照文献は、adenovirusに関わる情報を網羅的によくまとめられおり、初学者には貴重な情報源となります。以下、原文の英語を日本語にまとめるとともに記載分類を再編成しレジメ化しました。以下の(数字)は、原文での参照文献番号を表しています。

    • 遺伝子投与(核酸ワクチン)による抗原の産生では、抗体の生成は可能だが、抗原提示に関するT細胞の免疫応答が弱い可能性 (核酸ワクチンの弱点の可能性)
    • adenovirusのウイルス膜表面への抗原提示、あるいはAdenorirus自体によるアジュバント効果(可能性)では、抗体の生成とT細胞の免疫応答のどちらも強力に得る可能性が高まる

    adenovirus

    adenovirusの特徴は、DNAウイルスであり以下の通りです。

    • カプシドとゲノムで構成されている
      • 表面抗原を構成するタンパク質は、(1)ペントン、(2)ヘキソン、(3)ファイバー
    • 血清型間で、ヘキソンの超可変領域とファイバーのエピトープ配列の不均一性が高い
    • 殆どの人は抗体を持っている
    • サイズ : 70 ~ 90 nm
    • 26~45kb二本鎖DNAゲノム、両端に100-140bpのフランクを持つ2つの逆方向末端反復を含む
    • 相補のDNAはそれぞれタンパク質をコードしている(双方向)
    • オルタネイティブ・スプライシングによりmRNAの異なるポリA修飾を使用する

    遺伝子導入実験ハンドブック — タカラバイオ —

    AAV (Parvoviridae) : ssDNAウイルス, 5kb, 18-26nm, P1レベル, 染色体への積極的なゲノム組み込み(-)
    adenovirus (Adenoviridae) : dsDNAウイルス, 36kb, 70-90nm, P2レベル、染色体への積極的なゲノム組み込み(-)
    lentivirus (Retroviridae) : ssRNAウイルス, 8-9kb, 80-130nm, P2レベル, 染色体への積極的なゲノム組み込み(+)

    by Mr. Harikir (2021/02/11)

    https://catalog.takara-bio.co.jp/PDFS/transgenesis_experiment.pdf
    • 遺伝子は、それぞれ5つの初期遺伝子と後期遺伝子に分けられる
      • 初期遺伝子 : E1, E3, E4は、自然免疫を抑制する
        • E1
          • E1A
            • ウイルスDNA合成に必要な遺伝子の転写の活性化
            • 宿主細胞への影響 : p53依存的と非依存的によりアポトーシス(ハイジャックアポトーシス)を誘導(9)
            • immuning回避(T細胞への抗原提示の減少(67) )、腫瘍形成(60,61)
          • E1B
            • 宿主タンパク質(p53, Bak, BAX)への結合によりアポトーシスを阻害する(68~79)
        • E2
        • E3 : 免疫調節機能
          • 感染細胞を免疫細胞から認識されないようにする (78)
            • 検出MHCクラスI分子の表面輸送の遮断
            • 宿主細胞の表面にあるNK細胞受容体を減少させる
          • Death receptorsのダウンレギュレーションすることにより、adenovirus感染細胞のアポトーシスを阻害する
        • E4 (74, 75, 76, 77)
          • E1B-55とE4のタンパク質は、Daxxタンパク質を誘発することで、抑制されているウイルスのゲノム発現を可能にする
          • E1B-55kとE4の結合タンパク質は、自然免疫である抗ウイルス応答を抑制する
        • 細胞に取り込まれた時に発現する
        • タンパク質合成、ウイルス複製に必要な宿主遺伝子の発現調整
      • 後期遺伝子
        • L1-L5
        • アセンブリ、放出、宿主細胞の妖怪(1,5,6)
    • 非エンベロープ
    • 20面体DNAウイルス
    • 50以上の血清型 (遺伝的に多様)
    • Adenoviruses (Adenoviridae) (10,11,12)
      • Mastadenovirus
        • 動物のアデノウイルス(サル、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ)
        • ヒトのアデノウイルス (Human Adenoviruses; HAd)
          • 7つ (A ~ G)
          • 血清学的特徴では、67種類、更にサブグループ
      • Aviadenovirus
      • Siadenovirus
      • Atadenovirus
      • Ichtadenovirus
    • 宿主組織 : 眼、呼吸器、胃腸の上皮など生命の危機に関わらない感染
    • 1953年、Roweらにより組織から分離された(2)
    • ヒトと動物の間で無症状の気道感染症を起こす
    • 免疫不全の患者では生命に危険がおよぶ場合がある
    • 殆どのヒトで中和抗体を有している(3)
    • 癌療法に使用される(4)
    • 構成タンパク質(6, 7, 8)
      • ヘキソン
        • 主たる表面タンパク質(270 x 3量体)
        • 超可変領域を含む。この領域を利用してワクチン抗原にできる
      • ペントン
        • 20面体の12の頂点に12 x 5量体
        • ファイバーと共に宿主細胞の受容体のリガンドとなる
      • ファイバー
        • 12の3量体が突出している
        • ペントンと共に宿主細胞の受容体のリガンドとなる
      • IIIa
        • カブシドの内側に位置する
        • 頂点領域の裏打ちと内包するウイルスゲノムの組み立てに寄与する
      • VI
        • 内側と外側のカプシドシェルをリンクする
      • VIII
        • ヘキソンの裏打ち
      • V, VII, IX
        • DNAゲノムに関連し、ビリオンのコアを構成
        • 末端タンパク質は、2本鎖DNAの末端に結合し、複数のVにより作られたコアとリンクして位置を安定化

    アデノウイルスに対する免疫

    宿主におけるウイルス認識

    adenovirus、その部品を認識するもの (27,28,29,30,31.32,33,34,35,36,37,38,39,40,41)

    • 細胞内でのバターン認識受容体 (PRR)
      • adenovirus由来の5’-triphosphateを持つ2本鎖RNAは、RIG-Iなどのcytosolic PRRに認識される
      • DNA, RNAは、TLR3, TLR7, TLR8などのエンドソーム膜(endosomal membrane)にあるintracellular PRRsに認識される(48,52,53,54,55)
      • 2本鎖DNAの生体内認識 (34,35,56,57)
        • TLR9
        • DNA-dependent activator of IRFs (DAI)
        • DNA-dependent protein kinase (DNA-PK)
        • IFNγ-inducible protein 16 (IFI16)
        • DEAD (Asp-Glu-Ala-Asp) box polypeptide 41 (DDX41)
        • cyclic guanosine monophosphate-adenosine monophosphate (cGAS)
    • 病原体関連分子パターン (PAMP)
    • PRRがPAMPを感知する
    • ウイルス(病原体)であると認識すると、1型インターフェロンを発現しウイルス抑制、炎症性サイトカイン発現 (23,24,25,26,27)
    • receptor : Coxsackie adenovirus receptor (CAR)
      • 促進因子 : IL-8, TNF-α
    • integrin αvβ5 heparin sulfate proteoglycans
    • CD46
    • sialic acid
    • scavenger receptors (マクロファージ、樹状細胞)(33)
    • Toll-like receptors(TLRs)
    • RIG-I like receptors(RLRs)
    • nucleotide-binding oligomerization domain (NOD-like receptors (NLRs)
    • cytosolic DNA sensors
    • effector molecules
    • CD46, desmoglein-2 (type B Adのmacropinocytosis)(39,40)→ IL-12で誘発されるINF-γの産生を抑制する
    • 細胞のβ3インテグリンは、pentonのAgr-Gly-Asn (RGD)モチーフに親和性あり

    Vectorとしての良くない免疫応答

    • adenovirus粒子のみでは自然免疫の誘導は不十分であり、その原因は、DNA由来として残っている(51)
    • 肝臓、脾臓のマクロファージの活性化(42,43)
    • MCP-1, RANTES(TLR2依存性)の活性化
    • IL-1抗体は、adenovirusによる角膜の炎症反応を低減化する(mouse)(45,46)
    • TLR9(E1, E3欠損adenovirusでも感知する→角膜炎症、IL-6,IFNα産生)(49,50)
    • plasmacytoid dendritic cells (pDCs)は、TLR9-MyD88依存、myeloid DCs (mDCs)は依存しない(48)
    • 細胞免疫
      • CD4+ Th1細胞
      • CD8+ T細胞

    adenovirus vector

    adenovirus vectorの特徴

    • HAd5は遺伝子送達用ベクターとして開発された
    • 非複製性
    • 広範囲な組織指向性
    • ゲノム解析が進んでいる
    • 大きなDNA遺伝子挿入が可能
    • 宿主ゲノムに組み込まれない
    • 宿主細胞の核にepsomeとしてDNAが残る
    • 36kbの遺伝子をパッケージング可能
    • 自然免疫(先天性免疫)シグナルを活性化することでワクチンとしての利点がある(21,130)
      • 効果的な免疫細胞刺激→適応免疫(獲得免疫)である液性・細胞性の免疫応答
      • 細胞内の病原体の解決には、CD8+細胞障害性Tリンパ球(CTL)が重要
      • adenovirus vectorで運ばれる抗原は、
      • MHCクラスI分子を介してT細胞に提示されるめた、adenovirus vectorは、堅牢なCTL応答を誘導できる
      • CTLは、ウイルス感染細胞、細胞内病原体、ガン性細胞を強力に認識し死滅できる
    • 抗体産生及び導入遺伝子て特異的T細胞の誘導
    • 必要な遺伝子をadenovirusから分離し、HEK細胞に担わせることで、共同してベクターを産生させる
    • adenovirusのタンパク質とHCVのタンパク質の相同性が高い

    遺伝子治療におけるadenovirus vectorの歴史

    繰り返し投与により体液性免疫、細胞性免疫、細胞性細胞毒性、発癌などの課題に直面した(129)

    • 1992年、alpha-1 antitrypsin (A1AT)欠損症(124, 125)
    • 嚢胞性線維症 (CFTR遺伝子)(126)
    • 尿素回路関係(オルニチントランスカルバミラーゼ)(127,128)

    ワクチンにおけるadenovirus vectorの歴史

    • HIVワクチン 2003年~2006年、Merck(131)
      • HAd5 vector-based

    第1世代

    アデノウイルス・ベクターは、HEK293細胞とともに改変が進められてきた(2021/02/11, by MR.HARIKIRI)。

    • First generation
    • E1削除
      • 初期、後期のウイルスタンパク質は、濃度依存的にMHCクラスIによる抗原提示により細胞死を誘発するが、それをホスト細胞以外では産生できないことにより毒性低減化に繋がる(104,105)
      • 削除により非複製アデノウイルスとなる (HEK293(ヒト胚性腎細胞), PER.C6などのE1トランスフェクト細胞を使用する (93)
      • HEK293には、E1領域にトランス相補性を入れている(組織形質導入能力)
      • 自然相同組換えが起こり複製力のあるadenovirus(RCA)が出現する可能性を持っている(98)
      • RCAのリスク低減としてのPER.C6では、独自のプロモーター(PGK)を持つadenovirusのE1領域の発現カセットを使用し相同領域を削除(99,100)
      • 4.5kb導入可能となった (92)
    • E3削除
      • 免疫学的経路の阻害(101)が知られている
      • 完全に削除された(102)
      • 8kb導入可能となった(103)

    第2世代

    増殖中の複製能力のあるadenovirus生成の可能性を排除できたが、導入遺伝子の発現が少ないとされる。依然として残る課題は、免疫原性と細胞毒性である。

    • Second generation
    • E1削除 : 第1世代から継承
    • E2削除
    • E3削除: 第1世代から継承
    • E4削除
    • 10.5kb導入可能となった

    第3世代

    ITRとパッケージングシグナルを除く全てのウイルスシーケンスを削除(114)

    • Third generation (114)
      • ITRs
      • packaging signal
    • Helper Dependent or gutless adenoviral vectors(115, 116, 117)
    • high capacity adenoviral vectors (HCAds)と呼ぶ
    • 2種類のvectorが必要(トランスフェクション)
      • Helper virus
        • ホスト細胞に組み込んでいたウイルス遺伝子補完遺伝子をHelper virusで提供により、adenovirusタンパク質を合成可能となる→ capsidのアセンブリ→HCAD genomeのパッケージング
        • HCAdsのみのパッケージングが可能
        • packaging signal flanking loxP siteを含む
          • Helper virusのパッケージングシグナルは、loxP siteのCreを介した組換えにより阻害されることで、Helper virusのgenomeがadenovirus粒子に集まるのを防ぐ(機能が十分でない場合、Helper Virus汚染の問題が生じる)
      • HCAd genome
        • ITRsを含む
        • packaging signalを含む
    • HEK293細胞
      • constitutivery express Cre recombinase
    • Helper virus
    • 免疫原性と細胞毒性の低減化(118,120,121,122)
    • 課題は、生産方法が複雑、Helper virusの汚染問題(123)
    • 36kb導入可能となった

    新型コロナウイルス・ワクチン

    現在、世界で喫緊の課題である新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対するワクチン開発は、イギリス(英国)のアストラゼネカ(Astrazeneca)が最も進んでいるようです。

    英国のAstrazenecaとOxford大学が共同開発しているSARS-CoV-2の感染症(COVID-19)ワクチンは、アデノウイルスをベクターとして使用するAdenovirus vector vaccineです。

    現在、臨床試験は、~10,000人程度を予定されるPhase III試験に入っており、今年中には、20億ドーズの供給が始まると言われています。日本へも1億ドーズを供給する準備があると言っています。Phase I/II試験(約1,000人)の結果、中和抗体の上昇と感染した細胞を破壊するT細胞の誘導が確認されており、結果は良好のようです。1回投与では90%代の効果、2回投与では100%の効果が確認されました。2回投与の場合、日本への1億ドースは、5,000万人分の計算になります。

    Phase I/IIの臨床試験の内容は、以下の記事もご参照ください。

    編集情報
    2020/07/22 Mr.HARIKIRI
    2020/07/25 追記 (adenovirusの網羅的情報)
    2020/08/03 文言整備
    2020/08/08 文言整備
    2020/09/08 追記(細胞免疫)

    以上

  • 気になる企業 – AstraZeneca; アストラゼネカ [2021/01/28]

    気になる企業 – AstraZeneca; アストラゼネカ [2021/01/28]

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    サイトから

    • 2019年売上高 : $ 24.4bn (約2.4兆円)
    • 2020/12のAlexion買収二より、武田薬品と並ぶ規模となる
    • Headquarter: イギリス
    • 製品
      • ダグリッソ : EGFR(T790M変異)の非小細胞肺がんの2次治療
      • シムビコート : 気管支喘息治療薬
      • イミフィンジ : 抗PD-L1抗体(デュルパルマブ)
      • など
    • 2020/12/12, Alexionを買収 source
      • Alexion Pharmaceuticals, Inc.: 生物医薬品会社 sourceです。従業員数は、約3,000人。市販製品には、「SOLIRIS」(エクリズマブ)、「Strensiq」(アスフォターゼアルファ)、「Kanuma」(セベリパーゼアルファ)、「ULTOMIRIS」;長時間作用型C5阻害剤で、終末補体カスケードのC5タンパク質を阻害するmAb、「Andexxa」、「Ondexxya」などがある。臨床開発プログラムには、ALXN1210、ALXN1810、ALXN1720、ALXN1830、ALXN1840、ABY-039などがある。

    COVID-19関連

    新型コロナワクチンの開発

    • 2021/01/28, 日本における供給体制が分かってきました(goto
    • 2020/09/12, 因果関係なしとしてUK治験を再会 source
    • 2020/09/09, アメリカから12億円の資金を受けていた当該ワクチン開発において、Phase 3 (3万人-内1万人はプラセボ、大規模無作為割付、二重盲検, source)の試験で1人に重い症状を示したことから、安全性の観点からPhase 3試験の一次中止したと発表した。同日、大手ワクチン開発企業は、ワクチン開発は、安全性第一であるとの共同声明を発表したした。
    • 2020/08/05, 新型コロナ ワクチン供給で「アストラゼネカ」と合意へ 厚労省 (NHKニュース), 1億回分以上の供給の見通しが立った
    • 2020/07/20, Phase 1/2 (COV001)の臨床試験結果を発表 astrazeneca
      • 18~55歳、健常人、1,077人
      • 対象ワクチン : 髄膜炎菌共役ワクチン(MenACWY)
      • 単回投与、2回投与(10人/1ヶ月)
      • 投与後1ヶ月で95%の被験者においてSARS-CoV-2のスパイクタンパク質に対する抗体が4倍に増加
      • それに伴いT細胞応答が誘導され、14日目をピークに投与後2カ月間維持された
      • MNA80アッセイによる中和活性は、ワクチン投与後4週後で、1回投与被験者では、91%、2回等予後被験者で100%であった
      • 深刻な有害応答は無く、一時的な局所・全身応答は7割で見られた(頭痛、疲労、悪寒、発熱、倦怠感、筋肉痛)
      • 予期せぬ反応は引き起こさず予想された結果と一致するが、Phase III試験で確認する必要がある
      • 論文(LANCET)から方法の詳細
        • ワンチン : SARS-CoV2スパイクタンパク質を発現するチンパンジーAdenovirus vectorワクチン (ChAdOx1 nCov-19)
        • 実施施設 : 英国5サイト
        • 単一盲検ランダム化比較試験
        • 18~55歳
        • 投与量 : ChAdOx1 nCov-19 (5e10 particles)
        • コントロール : MenACWY
        • 評価
          • 総IgG ELISA
          • マルチプレックスイムノアッセイ
          • 中和アッセイ
          • 偽ウイルス中和アッセイ
          • 細胞応答 (ex-vivoインターフェロン-γイムのスポットアッセイ)
    • ChAdOx1 nCoV-19のSpikeタンパク質の設計は、Jenner Instituteで開始(2020/01)
    • Virus Bankingおよび臨床試験サンプルは、オックスフォード大学 (Oxford University)のClinical BioManufacturing Facility
    • 今後の商用製造は、イタリアAdvent社に移されるとみられる
    • 2020/06, 日本政府と協議を開始の合意を発表
    • 第一三共、Meiji Seikaファルマ、KMバイオロジクスと協力し日本でのワクチン安定供給をしていく
    • 2020/01/28, 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発が最も進んでいるのが、イギリスのAstraZenecaです。現在、オックスフォード大学と共同開発した新型コロナウイルスワクチン「AZD1222」の臨床第3相試験(Phase 3)をおこなっいます。その他、中国の3社もPhase 3で臨床試験を行っています。

    ワクチンの臨床結果による有効性の比較

    世界の製薬企業であるPfizer, ModernaおよびAstrazenecaの臨床試験の成績の比較は、以下のをご参考にしてください。

    新型コロナワクチン、日本への供給

    日本での新型コロナワクチンは、まず、Pfizer製から投与されると言われています。Astrazenecaの新型コロナウイルス・ワクチンの日本での供給体制については、以下の通りを予定されているとのことです (2021/01/28, Mr. Harikiri)

    • 国内での製造担当は、兵庫県のJCRファーマー
      • バイオロジクス製品化実績を多く持つ
    • 容器充填は、熊本県のKMバイオロジクス
      • 充填能力として、半年で5,700本。
    • 包装は、東京のMeiji Seikaファルマです

    その他開発品(治療薬)

    • Calquence (アカラブルニブ) : 高サイトカイン血症) source
      • 慢性リンパ性白血病(CLL)または小リンパ球性リンパ腫(SLL)の成人患者に対する治療薬
      • 承認2019年に承認
    • フォシーガ (ダパグルフロジン) : 臓器不全
      • KEGG情報 source
      • 選択的SGLT2阻害剤−糖尿病治療剤−
      • 2020/05, FDA承認

    編集履歴

    2020/01/28 Mr. Harikiri
    2020/07/22 追記(その他開発品)
    2021/01/28 追記(新型コロナワクチンの基本での供給体制)