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  • [抗体医薬] アルツハイマー病治療薬: Biogen & エーザイ 共同開発 ADUHELM はアメリカでは条件付き承認,エーザイ& BioArctic AB共同開発のlecanemabは日本で承認取得[2023/10/11]

    [抗体医薬] アルツハイマー病治療薬: Biogen & エーザイ 共同開発 ADUHELM はアメリカでは条件付き承認,エーザイ& BioArctic AB共同開発のlecanemabは日本で承認取得[2023/10/11]

    アデュカヌマブ

    痴呆症の内の60%は、アミロイドβが蓄積して脳の神経細胞を壊すアルツハイマー病 (AD) と言われいます。このアミロイドβ(Aβ)を取り除くことで、進行を遅らせることができると考えられる抗体医薬(IgG1)が、アメリカのFDAが、迅速承認という条件付きで2021/06に承認しました。今後、米国では市販され多くの患者さんに投与されることになります。その全ての治療結果について、再評価されるというのが、条件付きの理由です。大規模な治療成績において、治療効果が認められない場合は、承認が取り消されます。

    2023/10現在,このaducnumabは,Biogenとエーザイの共同開発品ですが,日本での承認は,未だされていません.しかし,エーザイとBioArctic ABの共同開発してたrekanemab (使用品名: レケンビ)が,2023/8月に日本で承認されました.米国では既に,2023/07に承認されています.

    • Aduhelm (aducanumab) 

    これまで、沢山の医薬品開発企業が、ADの治療薬として抗体医薬も含めて開発が行われてきました。根本的な治療ではない治療薬の承認は20年以前にあるようですが、今回は、初めての根本的な治療につながると考えられる治療薬です。しかし、aducanumab での臨床結果は、Aβ(アミロイドベータ)を減らせることは証明できたものの、それが痴呆症を遅らせることを証明したものではありません。そのため、条件付きの承認なのです。僕も、20年以上前に、同様の開発プロジェクトに関わったことがあります。今回、抗体医薬品として承認されたことは、本当に画期的なことです。Biogenがあきらめず、承認まで漕ぎ着けた背景については参考5)(Bloomberg)に詳しく示されています。

    • aducanumabは,の凝集体を標的としている抗体医薬
    • lekanemabは,の可溶性(プロトフィブリン)と不溶性を標的としている抗体医薬

    副作用

    アルテプラーゼ (レカネマブ) : 薬剤投与中に脳出血を発現した場合,出血を助長するおそれがある(2024/05/22)

    研究紹介コラム 認知症の新しい治療薬アデュカヌマブについて(1)

    研究紹介コラム 認知症の新しい治療薬アデュカヌマブについて(1) | 国立長寿医療研究センター (ncgg.go.jp)

    抗アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、日本において早期アルツハイマー病に係る適応で新薬承認を申請

    抗アミロイドβプロトフィブリル抗体「レカネマブ」について、日本において早期アルツハイマー病に係る適応で新薬承認を申請 | ニュースリリース:2023年 | エーザイ株式会社 (eisai.co.jp)

    Lecanemab(BAN2401)の臨床効果についてアルツハイマー病協会国際会議2021(AAIC2021)のLate Breakingとして発表

    Lecanemab(BAN2401)の臨床効果についてアルツハイマー病協会国際会議2021(AAIC2021)のLate Breakingとして発表 | ニュースリリース:2021年 | エーザイ株式会社 (eisai.co.jp)

    aducanumab

    aducanumabの開発名は、BIIB037で、スイスのNeurimmuneが発見したモノクローナル抗体ということです。アミロイドβ(Aβ)に高い結合親和性がありますが、脳の実質細胞に存在するAβに特に結合し、血管に沈着しているAβには結合しません(2013年当時)2)

    臨床試験プロトコル

    aducanumabの臨床試験のプロトコルの概要は、以下の通りです3)

    • エンドポイント : 18ヶ月目のPET画像によるAβプラークの減少
    • 患者数 : 3285人
    • 地域 : アメリカ、カナダ、EU, オーストラリア
    • Dose : 最初は1mg/kgからスタートし、徐々に投与量を上げていく(4weeks刻み)
      • 1mg/kg
      • 3mg/kg
      • 6mg/kg
      • 10mg/kg

    結果

    有効性の評価は、以下の試験で実施されました。

    • Phase 3
      • 対象 : 初期段階である軽度認知障害と軽度認知症
        • EMERGE : 試験1 (アミロイドβプラーク減少71%, p<0.0001)
        • ENGAGE : 試験2 (アミロイドβプラーク減少59%, p<0.0001)
        • PRIME : アミロイドβプラーク減少61%, p<0.0001)
        • PETで評価
    • Phase 1b
      • プラセボ
        • 無作為化二重盲検容量設定 : 試験3

    副作用

    安全性ブロファイルです。

    • 投与1回以上の3,000人の患者で確認

    有害事象です。

    • 治療受けた2%の有害反応(プラセボより2%以上高いもの)
      • ARIA-E
      • 頭痛
      • 脳表へモジデリン沈着
      • ARIA-H関連表在性せん妄
      • 転倒
      • 下痢
      • 錯乱/せん妄/精神状態の変化/見当識障害
    • ARIA(脳の浮腫) :MRI観察によるアミロイド関連画像異常( ARIA-E, ARIA-H)
      • 10mg/kg投与群 : 41%
        • 症候性あり : 24%
          • 頭痛
          • 錯乱
          • めまい
          • 視覚障害
          • 吐き気
      • ブラセボ : 10%
        • 症候性あり : 5%
          • 同上

    aducanumab/参考文献

    1)

    ADUHELM™(アデュカヌマブ) アルツハイマー病の病理に作用する初めてかつ唯一の治療薬として米国FDAより迅速承認を取得アミロイドβプラークの脳内蓄積はアルツハイマー病の根本的な原因

    臨床試験において、ADUHELMは18カ月でアミロイドβプラークを59~71%減少, 2021/06/08

    https://www.eisai.co.jp/news/2021/news202141.html
    2)

    Aducanumab – ALZFORUM Therapeutics –

    https://www.alzforum.org/therapeutics/aducanumab
    3)

    EMERGE and ENGAGE Topline Results: Two Phase 3 Studies to Evaluate Aducanumab in Patients With Early Alzheimer’s Disease

    – EMERGEとENGAGEのPhase 3試験のプロトコルと結果の詳細がわかる資料

    https://investors.biogen.com/static-files/8e58afa4-ba37-4250-9a78-2ecfb63b1dcb
    4)

    FDA Grants Accelerated Approval for Alzheimer’s Drug, June 07, 2021

    https://www.fda.gov/news-events/press-announcements/fda-grants-accelerated-approval-alzheimers-drug
    4)

    Aducanumab – wikipedia –

    https://en.wikipedia.org/wiki/Aducanumab
    5)

    アルツハイマー病治療薬巡る転機に-バイオジェンのFDA承認獲得 – 2021/06/08, Bloomberg –

    https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2021-06-08/QUCXG4DWX2PU01

    編集履歴

    2021/06/08, はりきり(Mr)
    2021/06/09,追記(bloomberg記事より)
    2023/10/11,追記(結局,日本でアルツハイマー治療抗体医薬は,aducanumabに先んじてlecanemabが最初に承認された)
  • [抗体医薬] デュピクセント; dupilumab – アトピー性皮膚炎 –  Regeneron/Sanofi、個人的には画期的な医薬品と思ったが、薬価はそうは判断していない – ID3809 [2020/05/21]

    [抗体医薬] デュピクセント; dupilumab – アトピー性皮膚炎 – Regeneron/Sanofi、個人的には画期的な医薬品と思ったが、薬価はそうは判断していない – ID3809 [2020/05/21]

    デュピルマブ

    SanofiとRegeneronの製品。適応症は重症のアトピー性皮膚炎

    • 抗体医薬
    • IgG4
    • 炎症性サイトカインのIL-4とIL-13の過剰な働きを抑制する、抗IL-4/IL-13受容体抗体 source: pmda 非臨床概要
      • IL-4Rαサブセットに対する抗体
      • IL-4Rαに結合することで、I型受容体とII型受容体によるシグナル伝達を疎外する
      • I型受容体(IL-2RγとIL-4Rα複合体)
      • II型受容体(IL-13Rα1とIL-4Rα)
      • IL-4シグナル伝達、IL-13シグナル伝達を阻害する
    • ステロイド外用薬との併用も可能

    アトピー性皮膚炎に抗体医薬登場 (引用、日経メディカルより)

    Regeneron 社(売上高約80億ドルInvesting.com調べ)が開発したデュピルマブ(商品名デュピクセント皮下注300mgシリンジ, 薬価83152円, 2019/12現在、サノフィ販売)は、アトピー性皮膚炎治療薬(AD)として、2018年1月19日に製造販売承認がなされた。用法用量は、成人に対して初回は600mgを投与し、その後2週間隔で300mgを投与する。

    IL-4, IL-13の受容体

    • Th2細胞がIL-4とIL-13を放出
    • 刺激を受けたB細胞は、IgEを放出
    • IgEはマスト細胞に結合し、そのIgEにアレルゲンが結合
    • 刺激を受けたマスト細胞は、Histamine, Leukotrieneを放出
    • 気道過敏を生じる source, 2003

    EUでは、

    2017/09/28, SanofiとRegeneronは、EUで重症のアトピー性皮膚炎の成人患者に対する抗体医薬としてdupilumabの承認取得を発表したsource

    ジュピクセント

    (150mg/mL x 2mL, 300mg)

    薬価

    2019/12現在¥83,152
    2020/03改定¥66,356
    https://www.kegg.jp/medicus-bin/japic_med?japic_code=00067283

    Advice

     AD (atopic dermatitis)は、掻くことで更に増悪し、2型炎症反応による皮膚の炎症反応、活性化Th2細胞から産生されるサイトカイン(IL-4、IL-13)によって、引き起こされる。

    参考情報

    デュピルマブと同じ適用症(アトピー性皮膚炎)を狙ったAnaptysBio社が開発していた「エトキマブ」は、Phase 2b (ATLAS)で主要評価項目を達成できなかった(2019/11/8発表)ため、開発が中止された。

    編集履歴

    2019/12/03 はりきり(Mr)
    2020/05/21 追記(薬価改定)
    2020/06/25 追記 (I及びII型受容体、EUでの承認取得)