[ICH] Quality Management System – 「Annual Product Review」と「Product Quality Review」は、FDA、EMAで定義されている年次報告 [2025/04/03]

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はじめに

APR(Annual Product Review)は米国FDA、PQR(Product Quality Review)はEU(EMA)で採用されている用語で、いずれも医薬品の品質を年次で総合評価するGMP要件です。日本ではPQR(製品品質レビュー)の用語が採用されており、製造・試験結果、逸脱、安定性などをレビューし、品質の一貫性や改善点を把握する目的で実施されます。

APR/PQRはQMS(品質マネジメントシステム)に沿って実施される活動です。

* QMS : Quality Management System


その位置づけ:

APR(Annual Product Review)や PQR(Product Quality Review)は、GMPの枠組みにおけるQMSの重要な構成要素のひとつであり、ICH Q10「医薬品の品質システム」にも明確に記載されています。


ICH Q10での明記ポイント(抜粋):

  • 継続的改善の一部
  • 品質の一貫性評価
  • プロセス性能のレビュー
  • CAPA(是正・予防措置)活動との連動

実務上は:

  • QMSの中で定めた**手順書(SOP)**に従って、定期的・体系的に実施
  • 逸脱・変更・安定性データなどQMS全体の記録と連動して評価
  • PQRの結果は、マネジメントレビューや改善活動にも活用されます

つまり、APR/PQRは単なる「年次報告」ではなく、QMSによる継続的品質改善(CQI)の中核的プロセスといえます。


目次


APR / PQR の意味と違い

略称正式名称内容欧米/日本の使われ方
APRAnnual Product Review年次製品レビュー(アメリカ中心)主に米国FDAの文脈で使用される
PQRProduct Quality Review製品品質レビュー(ヨーロッパ中心)主にEU(PIC/S)やICH Q7/Q10で使用される

※両者は目的・内容がほぼ同じであり、地域や規制により名称が異なるだけです。
日本国内ではGMP省令改正(2021年施行)以降、**PQR(製品品質レビュー)**が正式に用いられています。


主なレビュー内容(APR/PQR共通)

以下の項目を「1年間ごと」などの周期でレビューします:

  • 製造バッチの一覧・傾向(出荷可否・再作業の有無など)
  • 規格外試験結果(OOS)、逸脱(Deviations)、変更管理(Change Control)
  • 安定性試験結果の推移
  • 苦情(Complaint)の傾向と対応
  • 回収(Recall)の履歴(あれば)
  • CAPA(是正・予防処置)の進捗と有効性
  • 改善提案、トレンド分析、継続的改善(継プロ)

目的

  • 品質トレンドの把握と予防措置
  • プロセスや規格の見直し判断材料
  • 規制当局への適合性確認(GMP遵守の証明)
  • QMS(品質マネジメントシステム)強化

実務的には?

  • **品質保証部門(QA)**が中心となり、製造部門・分析部門と連携してデータ収集
  • 年1回(品目ごと)、決まった様式で報告書(レビューサマリ)を作成
  • 内部監査やGMP適合性調査(当局査察)でも提出を求められる重要文書

APR/PQRの【具体的なプロセス】とは?

APR/PQR(Annual Product Review / Product Quality Review)は、**医薬品の品質保証と継続的改善の要(かなめ)**となるプロセスであり、GMPにおける重要なQMS活動のひとつです。

以下のような体系的かつ段階的なステップで進められます👇


Step 1:レビュープロセスの計画(計画書の作成)

  • 年次レビューの対象製品とレビュー期間の設定
  • 関連するバッチのリストアップ
  • 各部門(製造・分析・QA・薬事・安定性など)から収集すべき情報の項目定義
  • 進行スケジュールと担当者の割当

文書例:PQR実施計画書(PQR Plan)


Step 2:データ収集と分析(部門連携で実施)

収集する主な情報は以下のとおり:

分類主な内容
製造情報実製造バッチの一覧、ロット番号、収率、製造日時、使用原料
品質試験結果規格外試験(OOS/OOT)、分析結果のトレンド分析
逸脱・苦情Deviations、Change Control、顧客クレームなどの件数・傾向
安定性データ安定性試験結果(中間点/期限)、有効期間延長判断材料
回収情報製品リコールの有無と内容、是正処置の進捗状況
CAPA・変更管理開始/完了状況、根本原因、予防策の有効性レビュー

※ 必要に応じて:微生物モニタリング、機器校正・バリデーション履歴も含む場合あり


Step 3:レビューと評価(QA主導)

  • 品質トレンド分析:不良発生率・規格外傾向など
  • システムの適格性評価:製造・試験が規格通りに機能していたか
  • 改善提案とアクションの検討
    • 製造条件の見直し
    • 教育訓練の強化
    • 分析法バリデーションの再評価など

文書例:PQR報告書(PQR Report)


Step 4:報告書の作成と承認

  • 全体レビューを取りまとめた正式文書を作成
  • 品質保証責任者によるレビューと承認
  • **必要な改善・是正処置(CAPA)**があれば、実施計画と期日を明記

Step 5:改善措置(CAPAの実施)

  • PQRで挙げられたリスクや課題に対し、具体的な改善策を実行
  • 定期的なフォローアップにより、改善の効果を確認

APR/PQRはどのくらい重要?

  • GxP領域での**継続的改善(Continual Improvement)**の中心的なツール
  • 規制当局(FDA、EMA、PMDAなど)のGMP査察で頻出の重点項目
  • しっかりやっておくと、「品質文化」や「QRM(リスクマネジメント)」への信頼にもつながります

編集履歴

2025/04/03 Mrはりきり