blender : Physics についての機能説明 [2025/12/10]

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はじめに

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このサイトでの解説では,できるだけオリジナルの用語を使用している.

さて,今回は,物理演算の機能である「Physics」について解説します.物理演算なので,その現象を確認(見る)にはAnimationを実行する必要があります.

Physicsは,Properties画面にあります.Physicsには,表に示したように物理現象をシミュレーションする8つの種類があります.

例えば,アニメのキャラクターデザインのケースとして髪と人体とのシミュレーションを例示すると,Soft BodyやClothを髪のブロックに設定し,更にCollisionは,髪が接触する人体(肩や腕・・・)に設定してやれば,髪は人体の中に入り込まないようにできます.これは,Animation画面で確認することになります.

🔬 Blender 物理演算項目の解説

項目名日本語名特徴・用途
Force Fieldフォースフィールドオブジェクト(パーティクル、クロス、ソフトボディ、リジッドボディなど)に外力(重力、風、渦、磁力など)を与えるために使用されます。旗を風になびかせたり、爆発で破片を吹き飛ばしたりする表現に使われます。
Collisionコリジョンオブジェクトに衝突判定を設定します。クロス(布)、ソフトボディ(軟体)、パーティクル、および流体などのシミュレーションにおいて、他のオブジェクトとぶつかり合って変形したり動きが止まったりするようにするために必要です。床や壁などの「動かない障害物」に設定することが多いです。
Clothクロスなどの柔軟な物体の動きをシミュレーションします。旗が風になびく様子や、キャラクターの服、カーテンなどの表現に使われます。重力や風、他のオブジェクトとの衝突(Collisionを設定したオブジェクト)の影響を受けます。
Dynamic Paintダイナミックペイントオブジェクトにリアルタイムで波や凹凸といった変位、または塗料を塗られたようなペイントウェイト情報を作成できる機能です。ブラシオブジェクトとキャンバスオブジェクトを設定し、ブラシがキャンバスに触れたり、上を通過したりすることで効果が生まれます。水面に波紋を立てたり、雨粒の軌跡を表現したりするのに使われます。
Soft Bodyソフトボディゼリーゴム果物などの柔らかい素材の挙動をシミュレーションします。重力や衝突などで形状が大きく変形する動きを表現できます。
Fluid流体水、液体、煙、火、ガスなどの流体の動きをシミュレーションします。水が流れたり、渦を巻いたり、煙が立ち上ったりするリアルな表現を作成できます。
Rigid Bodyリジッドボディ変形しない固い物体(剛体)の動きをシミュレーションします。重力、衝突、摩擦などの影響を受け、ボールが転がったり、ドミノが倒れたり、物が崩壊したりする動きを再現できます。動く物体にはアクティブ、地面や壁など動かない物体にはパッシブを設定します。blender demoはここ
Rigid Body Constraintリジッドボディコンストレイント複数のリジッドボディオブジェクトを**ジョイント(継ぎ手)**でつなぎ、ヒンジ(蝶番)ピストンモーターなどの関係を持たせる機能です。ドアやロボットアームの動き、振り子のようなシミュレーションに使われます。

💇 髪の毛のシミュレーションに使う機能

1. パーティクルシステム(Particle System)

Blenderで髪の毛を作るための主要な機能です。

  • 機能: パーティクルシステム内の「ヘアー」タイプを使用して、オブジェクトの表面から非常に多くの曲線(ストランド)を生成します。
  • 用途: 静的な髪の毛や、風、重力などの影響を受け自動的に動くシミュレーションされた髪の毛を作成できます。カット、コーミング、テクスチャリングなど、髪の見た目とスタイリングの大部分を制御できます。
  • シミュレーション: 髪の毛一本一本の動き(ダイナミクス)を計算するために、パーティクル設定内の「ヘアーダイナミクス」を有効にします。

2. クロス(Cloth)

パーティクルシステムと組み合わせて、またはよりリアルな動きが求められる特定の状況で使用されます。

  • 機能: 髪の毛をメッシュとして作成し、そのメッシュ全体に**クロス(布)**の物理演算を設定します。
  • 用途: 特にロングヘア大きな束の髪で、髪の塊全体の重みや揺れ、他のオブジェクトとの衝突を、布のような挙動としてシミュレートしたい場合に有効です。
  • 組み合わせ: パーティクルシステムの「ヘアー」はレンダリング用の見た目を作り、クロスシミュレーションが設定された目に見えないメッシュがそのガイドとして動き、髪の動きを制御することもあります。

3. フォースフィールド(Force Field)

上記のシミュレーションに外的な力を加えるために使われます。

  • 機能: 風(Wind)、渦(Vortex)、重力(Gravity)などの力をシーンに配置します。
  • 用途: 風で髪の毛がなびく様子や、水中でのふわふわとした動きなど、環境による影響を髪の毛のシミュレーションに加えるために使用します。

したがって、リストアップされた項目の中では、直接的に髪の毛の動きのシミュレーションに使われるのはクロス (Cloth) の物理演算ですが、Blenderで髪の毛を作る際にはパーティクルシステムが主役となります。

👩‍🦱 ソフトボディを髪のブロックに適用する利点

ソフトボディは、特にアニメーションの効率とスタイルを重視する場合に、いくつかの大きなメリットがあります。

  • ✨ アニメーションの手間削減: 髪の毛一本一本のリアルなシミュレーション(パーティクルダイナミクスなど)は計算負荷が高く、制御が難しいです。ソフトボディを使うと、**髪の塊全体の慣性や重力による「遅延した動き」**を自動で計算してくれるため、アニメーターが手動で複雑な揺れをキーフレームする必要が大幅に減ります。
  • 💨 パフォーマンスの向上: 髪の毛全体を少数の低解像度のメッシュ(ブロック)として扱い、それにソフトボディを設定します。これにより、数万本のヘアストランドを計算するよりも処理速度が格段に速くなり、プレビューやレンダリングの時間を短縮できます。
  • 🎨 アニメ的な表現のしやすさ: ソフトボディは弾力性剛性を調整できるため、硬すぎず、柔らかすぎない、アニメ特有の「ぷるん」とした動き流れを比較的簡単に実現できます。これは、リアルな物理法則よりも、キャラクターの魅力を引き出すディレクションされた動きを優先するアニメーションに最適です。
  • 💥 衝突の管理: 髪のブロックメッシュにソフトボディを設定し、頭や肩にコリジョン (Collision) を設定することで、髪の毛が体や衣装を貫通するのを防ぐことができます。

💡 実際の制作ワークフロー(ハイブリッド方式)

このアプローチを採用する場合、以下のようなハイブリッドなワークフローになることが多いです。

  1. メッシュの作成: 前髪、横髪、後ろ髪ごとに、髪の形状をなぞる低解像度のメッシュ(ケージメッシュやガイドメッシュと呼ばれる)を作成します。
  2. ソフトボディの適用: そのメッシュにソフトボディの物理演算を適用し、重さ、硬さ、減衰などのパラメーターを設定します。
  3. パーティクルの生成: このソフトボディメッシュを、最終的なレンダリング用のパーティクルヘアーのガイドとして使用します。
  4. 結果: ソフトボディメッシュが動くと、それに追従してレンダリング用の髪の毛も動き、ブロックとしてのまとまり物理的な揺れを持ったアニメーションが完成します。

この手法は、VRChatなどのゲームアセットや、TVアニメーションの制作パイプラインで広く採用されている、効率的かつ効果的な手法です。

⛓️ 鎖のシミュレーションにおけるリジッドボディの有用性

リジッドボディは、**変形しない固い物体(剛体)**のシミュレーションに特化しており、鎖のリンク(環)のような構造をシミュレートするのに理想的です。

1. リアルな挙動の実現

  • 剛体として: 鎖の環一つ一つをリジッドボディとして設定することで、それぞれの環が変形することなく、物理法則に従って衝突、重力、摩擦の影響を受けながら動きます。
  • 慣性と反発: 鎖を持ち上げたり振ったりした際の慣性や、環同士がぶつかり合う際のカチカチという音が聞こえてきそうな、リアルな反発を再現できます。

2. リジッドボディコンストレイントによる結合

このアプローチの鍵となるのが、リジッドボディコンストレイント (Rigid Body Constraint) の利用です。

  • ジョイントの作成: 鎖の環と環の間にコンストレイントを設定することで、特定の軸での回転のみを許可する**ヒンジ(Hinge)**や、ボールソケット(Ball & Socket)のようなジョイントを作成できます。
  • 自由度の制御: これにより、環同士が自然に繋がり、現実の鎖のように柔軟に曲がりながらも、互いに離れないという動きを実現できます。

3. パフォーマンスと安定性

  • 高速な計算: リジッドボディシミュレーションは、クロスやソフトボディなどの変形を伴うシミュレーションと比較して、一般的に計算負荷が低く、安定しています
  • 安定性の確保: 多くの環を持つ鎖でも、適切なコンストレイント設定を行うことで、環同士の**不自然な貫通(めり込み)**を減らし、安定した動きを維持しやすいです。

📝 鎖の作成手順の概要

  1. 環のモデル化: 鎖の環のメッシュを一つ作成します。
  2. リジッドボディの適用: 環のメッシュにリジッドボディを設定し、タイプをアクティブ(動く物体)にします。
  3. 配列: 配列(Array)モディファイアなどを使って、必要な数の環を複製します。
  4. コンストレイントの設定: 隣り合う環同士の間に、リジッドボディコンストレイント(例:ヒンジまたはボールソケット)を配置して接続します。
  5. シミュレーションの実行: シーンに重力を設定し、シミュレーションを実行します。

この手法は、アンカーチェーン、吊り下げられた鎖、鎖帷子(くさりかたびら)など、様々な固い連結構造のシミュレーションに広く応用されています。

David Vogelさんが作成した鎖のblenderのデモがblenderのデモサイトにあります(link).

by Harikiri and Gemini3

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