イオン交換の原理を使ったクロマトグラフィ
文字通りイオンを交換反応で結合できる樹脂 (レジン) を使ったクロマトグラフィです。カラムにパックすれば陰イオン交換カラムクロマトグラフィーとなります。パックしない場合をバッチクロマトなどと呼びます。
タンパク質は、アミノ基やカルボキシル基を持っているので、プラス・チャージも、マイナス・チャージも持っています。
等電点 (pI)とは、タンパク質全体として電荷が中和されている状態の溶液pHを指します。因みに、あるタンパク質を等電点にpH調整すると、沈殿すると言われています。
イオン交換分離の原理と分離に影響する4つの因子とは? – ThermoFisher –
https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/principle-and-factors-of-ion-exchange-separation/
実務では
- 目的タンパク質の等電点(pI)を知る
- 陰イオン交換体に結合させたい場合は、目的タンパク質の電荷を負にするために溶液pHを塩基性に調整する
- 陽イオン交換体に結合させたい場合は、目的タンパク質の電荷を正にするために溶液pHを酸性に調整する
- イオン交換体との結合を弱めたい場合は、pHでコントロールできるか、実務的には塩濃度を上げることで、イオン結合を弱める手法をとる。もちろん両方を組み合わせることも可能。
原理
目的のタンパク質の電荷と溶液中の電荷を帯びたイオンとの競合により、イオン交換体(レジン)との親和性に強度が付くことで、吸着てずにパススルーさせたり、吸着後に溶出させたりする。
タンパク質の場合、弱塩基性、弱酸性のアミノ基を思っており、有効表面電荷の正負および強度に応じて、イオン交換原理によるクロマトグラフィが可能となる。下図のようにpHを酸性から塩基性にタンパク質が溶けている溶液pHを変化させた時、有効表面電化は、プラスチャージのカチオンからマイナスチャージのアニオンに変化していく。電荷がちょうどゼロ(0)になるpHを等電点 (pI)という。
なぜpHを上げていくと電荷がマイナスチャージになるのか
前述のCytivaの参考文献に示されているように、pHを酸性から塩基性に上げていく場合、なぜ電荷が、プラスからマイナスになっていくのか、その原理を以下に解説します。
酸と塩基・代謝概要 – 熊本大学、平成25年4月15日 病態生化学分野 (生化学2)教授、山縣 和也 –
http://www.medic.kumamoto酸と塩基・代謝概要-u.ac.jp/dept/biochem2/class/250415-1.pdf
タンパク質は、アミノ酸で作られているので、単純化してアミノ酸で考える。アミノ酸は、アミノ基(-NH2), カルボキシル基(-COOH)を持っており、両性電解質である。例外は、プロリンでアミノ基の代わりにイミノ基を持つ(本当はイミノ酸)。
- pI; 等電点となるpHでは、以下のように解離していて総体としての電荷はゼロである
- (-NH2) → (-NH3+)
- (-COOH) → (-COO-)
- 酸(HCl)を添加していくと、H+が増えるため以下の様に乖離して総体として正電荷であり、陽イオン交換体に結合できる
- (-HN3+) → (-HN3+)
- (-COO-) → (-COOH)
- 塩基(NaOH)を添加していくと、H+が減るため以下の様に解離して総体として負電荷となり、陰イオン交換体に結合できる
- (-HN3+) → (-HN2)
- (-COO-) → (-COO-)
pHとは? – 鈴研株式会社 –
https://www.suzuken-ltd.co.jp/choose/ph/
pHの理解
pHは水素イオン濃度を表しています。単純式は以下の通りです。
pH = ‐log [H+]
水は、以下のように電離しています
H2O = H+ <-> OH–
pHの最大と最小は、1と14です。水素イオン濃度と水酸イオン濃度を掛けるといつでも14になります。
H+濃度 × OH–濃度 = 10-14 mol/L
イオンの溶離効果は、1 価より2価の方が高い。
- 陰イオン : Na2CO3 > NaHCO3 > NaOH(KOH)
- 陽イオン : H2SO4 > メタンスルホン酸 = HCl
編集履歴
2021/02/13 Mr.HARIKIR