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  • [ビジネスモデル] 遺伝子治療ビジネスモデルについて考える – [2021/02/10]

    [ビジネスモデル] 遺伝子治療ビジネスモデルについて考える – [2021/02/10]

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    遺伝子治療薬のビジネスモデル

    企業が遺伝子治療の医薬品に参入する場合、コスト構造と見積もり患者数は、どうしても避けては通れない。

    遺伝子治療薬は、グローバルな大手の医薬品メーカーからようやく出始めてきたばかりの生まれたばかりの市場である。

    世界のバイオメーカー、バイオCDMOは、この動きに適応するために、大きな投資を始めている。

    最近、話題になったZolgensmaのビジネスモデルでは、美しい製造方法を突き詰めるのではなく、早期市場への導入で実績を作るモデルになっている。製造方法、特に精製においては、超遠心工程を組み入れており、美しくないが確実にAAVの精製は可能であり、早期市場投入という戦略では問題はない。

    以下、遺伝子治療薬のビジネスモデルについて、モデル疾患を想定して、簡単に各因子を見積もり、ビジネス戦略とそのモデルを考えてみた。

    遺伝子治療では、最低1回の投与で完治する。少なくとも10年は、その効果が持続すると仮定する

    これまでに治療方法がなかったり、技術革新により効果が高かったりする新規の医薬品の場合、少なとも日本では原価積み上げ方式で薬価がつくため、全てが患者さんに届いた場合では赤字は出ない。しかし、患者さんが少なかったりして、製造した製品全てが患者さんに届かない場合、販売が伸び悩むことになり赤字になる。

    患者さんとして、ある程度の集団がいなければ、企業は参入しにくい。最低限、現状の患者さん数を1,000人を想定する・・・・

    見積もり

    以下、見積もりの結果、世界を見据えた開発戦略、およびコスト削減が必要である。

    更に、遺伝子治療が故に考え得る、効果的なサプライチェーンに関して提案する。

    遺伝子疾患として、年間に一定数の出生率を、疾患ごとに想定する。

    血友病の場合10,000人あたり1人である。

    日本での新生児出生数は、年間80万人である。

    80万人 x 1/1万= 80人

    臨床試験への患者さんのエントリー数を100人と見積もる

    1億円もする遺伝子治療薬が既にででいるが、今後の新薬の薬価5000万円とする。

    価格は、日本では薬価。

    考え方としては、およそ類似薬価と原価積立方式がある。

    例示(糖尿病)

    類似の場合、例えば糖尿病の場合、透析適用になると月40万円、年500万円。10年治療すると5000万円となる。遺伝子治療費5000万円は、類似薬としは妥当である。

    この事例に対して同等の治療効果が期待できる遺伝子治療薬の薬価は、5000万円であると見積もることができる。この額より低いコストで製造することが目標となる。

    この戦略の場合、保管が長期となるため、保管コストも重要な意味を持つ。

    市場規模としては、以下の計算で概算を把握できる。

    • 既存患者 : 5000万円 x 1000人 = 500億円/1000人
    • 毎年 : 5000万円 x 80人 = 40億円/年

    ビジネス戦略

    ビジネス戦略は、世界を見据えた開発戦略が必要であると考える。ビジネスモデルは、グローバルな市場を狙うか、コスト削減戦略しかない。

    コスト削減については、この分野における大手バイオCDMOの先行投資が、結構大きな額で進めており、製造に関するコスト構造は、抗体医薬の製造コスト並みに低下することは遅い話ではない。

    コスト低減化

    最後に、コスト低減化策を提案する。

    rAAVを使用した遺伝子治療薬に関して以下提案する。

    • 他のバイオ医薬品と比較して、大幅に投与量がすくない
    • rAAVの培養生産性は、現状では高いと言えないが、今後、早い段階で高い産生が可能になると推察される
    • ある程度の培養生産性をもとにして、精製収率は、50%と想定する
    • 以下が、この提案の要である。原薬および製剤の有効期間の延長を考える。通常のバイオ医薬品では、3年程度であるが、これを10年、20年と保管できる条件を構築する
    • 受注生産とする。原薬段階で10年、20年保管している内に、需要が生じた時から、製材化を実施するというモデルを構築する。
    • 遺伝子治療は緊急性が高い疾患ではないため、数ヶ月先の治療に必要な製剤の製造を、殆ど製剤と組成が変わらない原薬から作ることで数ヶ月程度で製剤が出荷できる。
    • この場合、出荷試験の簡略化が必要となる。原薬段階での試験結果を製剤の出荷試験として代用できるような仕組みに仕立てなければならない。
    • 極端な案としては、原薬を単に融解しただけで製剤とすることが考えられる。これは決して難しいことではない。
    • 凍結融解での活性低下がないことを保証さえすれば、あとはなんとかなると考える。
      • その他、バイアル・栓などの凍結融解での物理的な強度安定性
    • 以上、端的に言えば、製材化して分注されたバイアルを極超冷凍庫に保管しこれを原薬とする。即ち、原薬は存在しない。
    • 投与量が少なく、患者数も少ないからこそ可能となる戦略であると考える。

    新薬の薬価はどう決まる?

    https://answers.ten-navi.com/newsplus/14330/

    編集履歴

    2020/02/05 Mr.Harikiri
    2021/02/10 追記 (Zolgensmaの戦略)