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  • [Bio-Edu] イオン交換クロマトグラフィの原理 – バイオロジクスの製造における基本 [2021/02/13]

    [Bio-Edu] イオン交換クロマトグラフィの原理 – バイオロジクスの製造における基本 [2021/02/13]

    イオン交換の原理を使ったクロマトグラフィ

    文字通りイオンを交換反応で結合できる樹脂 (レジン) を使ったクロマトグラフィです。カラムにパックすれば陰イオン交換カラムクロマトグラフィーとなります。パックしない場合をバッチクロマトなどと呼びます。

    タンパク質は、アミノ基やカルボキシル基を持っているので、プラス・チャージも、マイナス・チャージも持っています。

    等電点 (pI)とは、タンパク質全体として電荷が中和されている状態の溶液pHを指します。因みに、あるタンパク質を等電点にpH調整すると、沈殿すると言われています。

    イオン交換分離の原理と分離に影響する4つの因子とは? – ThermoFisher –

    https://www.thermofisher.com/blog/learning-at-the-bench/principle-and-factors-of-ion-exchange-separation/

    実務では

    • 目的タンパク質の等電点(pI)を知る
    • 陰イオン交換体に結合させたい場合は、目的タンパク質の電荷を負にするために溶液pHを塩基性に調整する
    • 陽イオン交換体に結合させたい場合は、目的タンパク質の電荷を正にするために溶液pHを酸性に調整する
    • イオン交換体との結合を弱めたい場合は、pHでコントロールできるか、実務的には塩濃度を上げることで、イオン結合を弱める手法をとる。もちろん両方を組み合わせることも可能。

    原理

    目的のタンパク質の電荷と溶液中の電荷を帯びたイオンとの競合により、イオン交換体(レジン)との親和性に強度が付くことで、吸着てずにパススルーさせたり、吸着後に溶出させたりする。

    タンパク質の場合、弱塩基性、弱酸性のアミノ基を思っており、有効表面電荷の正負および強度に応じて、イオン交換原理によるクロマトグラフィが可能となる。下図のようにpHを酸性から塩基性にタンパク質が溶けている溶液pHを変化させた時、有効表面電化は、プラスチャージのカチオンからマイナスチャージのアニオンに変化していく。電荷がちょうどゼロ(0)になるpHを等電点 (pI)という。

    Cytiva, https://www.cytivalifesciences.co.jp/newsletter/biodirect_mail/technical_tips/tips51.html

    なぜpHを上げていくと電荷がマイナスチャージになるのか

    前述のCytivaの参考文献に示されているように、pHを酸性から塩基性に上げていく場合、なぜ電荷が、プラスからマイナスになっていくのか、その原理を以下に解説します。

    酸と塩基・代謝概要 – 熊本大学、平成25年4月15日 病態生化学分野 (生化学2)教授、山縣 和也 –

    http://www.medic.kumamoto酸と塩基・代謝概要-u.ac.jp/dept/biochem2/class/250415-1.pdf

    タンパク質は、アミノ酸で作られているので、単純化してアミノ酸で考える。アミノ酸は、アミノ基(-NH2), カルボキシル基(-COOH)を持っており、両性電解質である。例外は、プロリンでアミノ基の代わりにイミノ基を持つ(本当はイミノ酸)。

    • pI; 等電点となるpHでは、以下のように解離していて総体としての電荷はゼロである
      • (-NH2) → (-NH3+)
      • (-COOH) → (-COO-)
    • 酸(HCl)を添加していくと、H+が増えるため以下の様に乖離して総体として正電荷であり、陽イオン交換体に結合できる
      • (-HN3+) → (-HN3+)
      • (-COO-) → (-COOH)
    • 塩基(NaOH)を添加していくと、H+が減るため以下の様に解離して総体として負電荷となり、陰イオン交換体に結合できる
      • (-HN3+) → (-HN2)
      • (-COO-) → (-COO-)

    pHとは? – 鈴研株式会社 –

    https://www.suzuken-ltd.co.jp/choose/ph/

    pHの理解

    pHは水素イオン濃度を表しています。単純式は以下の通りです。

    pH = ‐log [H+] 

    水は、以下のように電離しています

    H2O = H+ <-> OH

    pHの最大と最小は、1と14です。水素イオン濃度と水酸イオン濃度を掛けるといつでも14になります。

    H+濃度 × OH濃度 = 10-14 mol/L

    イオンの溶離効果は、1 価より2価の方が高い。

    • 陰イオン : Na2CO3 > NaHCO3 > NaOH(KOH)
    • 陽イオン : H2SO4 > メタンスルホン酸 = HCl
    イオン交換分離の原理と分離に影響する4つの因子とは? – ThermoFisher Scientific –
    作成者 LATB Staff, 01.19.2017



    編集履歴

    2021/02/13 Mr.HARIKIR
  • [用語] AEX : Anion Exchange [2023/10/18]

    [用語] AEX : Anion Exchange [2023/10/18]

    AEX

    AEXは,バイオ医薬品の製造に使用するために,陰イオン交換隊を精製基材である.AEX chromatographyは,AEXを使用した液体クロマトグラフィである.

    AEX; Anion Exchange, Anion Exchange (Chromatography)を指す. 陰イオン交換. バイオロジクスの精製においては、核酸DNAやウイルス及び,その他の負電荷である不純物の吸着除去を目的に使用される。

    その他精製機材とクロマトグラフィ

    1. CEX : Cation Exchange – CEX chromatography
    2. HIC : Hydorphobic Interaction (HI) – HIC chromatography
    3. Affinity : Affinity Chromatography (Protein A chromatography)
    4. Multi modal : Multi Modal Chromatography

    編集履歴

    2020/12/14, Mr.Harikiri
    2023/10/18, 追記(その精製基材とクロマトグラフィ)

  • [Bio-Equip] 3M™ Emphaze™ AEX HP デプスフィルター・クロマトグラフィー[2020/07/23]

    [Bio-Equip] 3M™ Emphaze™ AEX HP デプスフィルター・クロマトグラフィー[2020/07/23]

    3M Emphaze AEX HP Depth Filter

    3M™ Emphaze™ AEX HP デプスフィルター・クロマトグラフィー

    https://www.3mcompany.jp/3M/ja_JP/company-jp/all-3m-products/~/3M-Emphaze-AEX-HP-デプスフィルター-クロマトグラフィー/?N=5002385+8711017+3291555558&rt=rud
    • 培養液の清澄化、純度・濃度および回収を最大化します
    • 除菌メンブレンフィルターの縮小化が可能です
      • デブリス除去性能が高いため、ろ過液の清澄度が高く、後段の除菌フィルターの大きさを削減可能です
    • 後段のウイルス不活性化を削減します
      • イオン交換体(AEX)基材が使われているため、負に帯電しているウイルスが吸着されます
    • 後段AEX工程の縮小化が可能です
      • イオン交換体(AEX)基材が使われているため、Host Cell Proteinなどの不純物も吸着除去により低減化が可能であるためです。

    考慮点

    一般的なDepth FilterからEmphazeに変更する場合、AEX機能による不純物除去効果の高さを良い意味で考慮する必要があります。後段以降の考慮プロセスは以下の通りです。

    • 除菌フィルター工程における圧力変化、膜サイズの低減化
    • 抗体医薬の場合、Protein Aカラムクロマトグラフィー工程におけるクロマトパターンの変化

    以上

    編集情報
    ID 17666
    2020/06/16 Mr.はりきり
    2020/07/23 追記 (説明追加、考慮点)
  • [rAAV-Edu] rAAV9の精製方法 – 特許, 2017 – ID2566 [2023/10/23]

    [rAAV-Edu] rAAV9の精製方法 – 特許, 2017 – ID2566 [2023/10/23]

    概要

    リコンビナントAAV(rAAV)の大規模精製方法に関する方法特許(Method Patent)です.

    精製のためのスタート原材料は,rAAVを発現した細胞培養上清です.

    精製ステップは,2段のクロマトグラフィーになっています.1段目には,高い塩濃度で吸着が可能な疎水クロマト,2段目には,低塩濃度で吸着が可能な陰イオンクロマトです.

    以上のステップにより,目的遺伝子を包含していな不要なウイルス粒子を効率的に除去可能であるとしています.

    rAAV9の精製条件

    当該特許は、現時点では「国際調査報告公開」です。

    特徴的なのは、pH10.2を採用していることです。タンパク質にとってpH8以上のアルカリ性は、タンパク質に良い条件ではありません。それと、システイン残基のSS結合が緩むのが、pH8から上のpHです。それをpH10.2を使っているのは、それでしか精製できないからでしょう。ある程度のタンパク質の劣化を許容しているということですが,劣化も精製度もコントロールできるのであれば,品質上問題ではありません.ただし,その結果が効力や副作用などに影響する場合は,投与の仕方を工夫する必要性が生じるでしょうか,それも臨床試験で確認していけばいよのです(Mr.Harikir, 2020/10/01)

    • Buffer A: 20mM Bis-Tris propane (BTP), pH10.2
    • washing: 10mM NaCl, 20mM BTP, pH10.2
    • gradient: 10mM to 190mM NaCl
    • correct rAAV9 by A260/A280 ratio monitoring

    クレーム

    1. AAV9の分離方法.pH10.2条件下の陰イオン交換クロマトグラフィーに吸着し、塩濃度勾配で溶出させA260とA280でモニタリングし、A280/A280の比率でAAV9 full capsideを回収
    2. A260/A280比が1未満から1以上になる
    3. 溶出ピークにおける伝導度が20mMから190mN NaCl相当となる
    4. AAV9中間体は50nM(50mMばはないのか、typo? 各所み見られる) NaCl相当で溶出する
    5. 不純物が10%未満
    6. 純度は少なくとも95%
    7. many more

    国際特許の権利発生までのフローは、このリンクを参照のこと。

    国際特許検索は、このリンクを参照のこと。使用方法は、このリンクを参照.

    特許庁 実務者向け説明資料は、このリンクを参照のこと.

    文献

    特許

    WO 2017/160360 A9, SCALABLE PURIFICATION METHOD FOR AAV9

    https://patents.google.com/patent/WO2017160360A9/en

    編集履歴

    2019/10/15 Mr.HARIKIRI
    2020/10/01 追記(pH10.2について)
    2023/10/23 追記(pH10でウイルスの品質に影響はあるだろうが,開発段階では問題にせずに,先に進むのが良い)
    2023/10/24 追記(概要)