[GMP] 医薬品に関わる試験記録書などのGMP文書の保管は5年間または使用期限後1年 [2026/03/03]

QC,Regulatory

はじめに

「試験記録の保管期間=5年」という記述はよく目にしますが、**果たしてそれが法的根拠に基づくものなのか?**について、しっかり確認してみましょう。


結論:5年という保管期間は、法的根拠に基づいているが、一律ではない


日本のGMP省令における記録の保存期間

医薬品GMP省令(厚生労働省令第179号)の該当条文:

第13条(記録の作成及び保存)
~中略~
二 作成した記録は、当該医薬品の製造販売後5年間又は当該医薬品の使用期限の終了後1年間のいずれか長い期間保存すること。


解釈ポイント

条項解釈
「製造販売後5年間」いわゆる「製造年月日」から5年ということが多い(ただし製造販売業者の定義による)
「使用期限の終了後1年間」例えば使用期限が3年の場合 → 製造から4年の保管義務
「いずれか長い期間」実務上はどちらか長い方を取る。製品によって変わる。

つまり、「5年」はあくまで一つの目安であり、製品の使用期限によってはそれ以上保管が必要になる場合があります。


実務例での比較

使用期限GMP上の保存期間(いずれか長い方)
3年3年+1年=4年 < 5年 → 5年保存
5年5年+1年=6年 > 5年 → 6年保存
7年7年+1年=8年 > 5年 → 8年保存

海外基準(補足)

EU-GMP(Annex 11など)やFDA(21 CFR Part 211)でも:

  • 原則は「使用期限後1年」または「5年間」、もしくは「製造販売後の最終ロットの流通期間を含めて一定期間」などの規定があり、日本と同様に記録保管期間は義務です。
  • 特定の国・製品・契約で長期(10年など)が求められることもあります。

まとめ

医薬品GMP(日本)の文書・記録の保管期間は、原則として**「作成の日(SOP等は“使用しなくなった日”)から5年間」。ただし当該製品に紐づく記録等で「有効期間(使用期限)+1年」が5年より長い場合**は、教育訓練に係る記録を除きその長い期間を適用します。これを前提に、代表的な文書群+不足しがちな文書も含めて表に整理します。

質問回答
5年という数字に法的根拠はある?はい、日本GMP省令第13条に基づく
5年でよい?製品の使用期限によっては6年・8年など長くなる場合あり
実務的な扱いは?一律「5年保存」が多いが、製品ごとに「使用期限+1年」と比較して判断が必要

【根拠】

  • 改正GMP省令(医薬品・医薬部外品GMP)では、文書・記録を作成の日(手順書等は使用しなくなった日)から5年保管し、有効期間+1年が5年より長い場合は(教育訓練記録を除き)その期間とする旨が規定されています。 
  • PMDAのQA(2022-04-28 事務連絡)でも、記録の保管期間の考え方として上記整理が示されています(教育訓練記録は5年)。

その他の文書・まとめ表

【保管期間まとめ(医薬品GMPの一般形)】

表の読み方

  • 最低保管期間:法令の“最低ライン”(SOPで延長はあり得る)
  • 起算日:省令の規定(SOP等=「使用しなくなった日」)に合わせて記載 
文書・記録の種類(例)起算日最低保管期間(法令上の一般形)備考(不足しがちな文書も含む)
製造指図・製造記録(BMR/BPR)作成日5年 または 有効期限+1年(長い方)ロット関連の中核記録
包装記録(BPR:表示・包装・ラベリング含む)作成日同上添付文書/表示の版管理とセットで重要
試験記録(分析生データ、計算、結果、承認、CoA)作成日同上**生データ(クロマト、生ログ、監査証跡)**も含めて運用設計が必要
OOS/OOT調査記録(逸脱に紐づく試験系)作成日同上“不足しがち”だが査察で見られやすい
逸脱(Deviation)記録作成日同上(製品品質に関与する限り)教育訓練と混同注意(訓練は別扱い)
変更管理(Change Control)記録作成日同上(製品品質に関与する限り)変更起点のリスク評価も含め保管が一般的
CAPA記録作成日同上(製品品質に関与する限り)逸脱/苦情/監査所見から連鎖するため一塊で管理
出荷判定/製品品質照査(PQR/APR)関連記録作成日同上(製品品質に関与する限り)“品質システム系”だが製品と直結する場合は長期化しがち
安定性試験・安定性モニタリング記録作成日同上有効期限設定の根拠。期限+1年ルールと整合させやすい
原料・資材の受入/試験/払出記録作成日同上(該当ロットに紐づく限り)供給者管理の証跡にもなる
設備の日常点検記録(点検チェックシート)作成日原則:5年(※)製品品質へ影響する設備は「製品に紐づく記録」として扱う運用が多い(SOPで明確化推奨)
保守・修理記録作成日原則:5年(※)重要設備は当該期間を延長する運用も
校正記録(計測器、天秤、温度計など)作成日原則:5年(※)試験・製造の信頼性根拠なので長期化しやすい
清掃記録、洗浄記録、サニテーション記録作成日原則:5年(※)交叉汚染/微生物リスクの証跡
環境モニタリング記録(微生物、浮遊粒子等)作成日原則:5年(※)無菌/バイオで重要、トレンド用に延長されがち
バリデーション/クオリフィケーション文書・報告書(CSV含む)作成日原則:5年(※)設備・方法が存続する限り保管(SOPで「有効中+5年」等の設計が多い)
SOP/手順書、様式、規格書、製品標準書など(手順書等)使用しなくなった日5年 または 有効期限+1年(長い方)“改訂履歴の保管”も要求される 
文書配付・回収・改訂履歴(文書管理台帳)作成日原則:5年電子化時は改ざん防止・アクセス管理が論点
自己点検/内部監査記録作成日原則:5年品質システム文書として5年設計が多い
苦情(Complaint)・回収(Recall)記録作成日原則:5年(製品に紐づくなら期限+1年も考慮)市販後の追跡で延長されがち
教育訓練記録作成日5年(固定)有効期限+1年の延長対象外

※「原則:5年」は、**省令の基本ルール(5年/期限+1年が長ければそちら)**を当てはめる整理です。個別に“設備は何年”のような年限が条文で網羅的に列挙されているわけではないため、製品品質への関連性で「期限+1年側」に寄せるか、SOPで明確化するのが実務的です。

編集履歴

2025/04/09 Mrはりきり
2026/03/03 追記(GMP文書に関する)