はじめに
医薬品は、GMPというルールに従い、予め定めた方法に従い作業を実施し、予め定めた品質に合致することを確認することで、製品として流通することが許される。直近で、医薬品の他成分混入の事件が報道されたので、ここで改めて、医薬品の安全性は、どのように構築、維持されているのかまとめてみました。
医薬品の安全性
医薬品の製造から出荷までの安全性は、どのように確保されているのでしょうか。医薬品は、通常、副作用があるため、厳密な用法容量を守らなければなりません。その前提となっているのは、その医薬品が設定された品質規格の通りに、製品として仕上がっていることです。それは、製造において規定通りに作業が進められることです。それは、使用可能な規格に合致した原材料や装置を使用していることです。それは、適切な作業者が作業に当たっていることです。
医薬品においてはGMP (Good Manufacturing Practies;適格性製造規範)を守ることが求められます.GMPにおいてコンプライアンス(compliance)とは,医薬品や医薬部外品の製造管理,品質管理,関係する法律や基準に従って業務を行うことを言います.
GMP Complianceのポイント
- 品質部門(QU)に権限を付与し、品質に関する決定を尊重すること
- 良好な文書化慣行を維持し、データの整合性を保つこと
- 不具合や不適合が発生した場合は、根本的原因を調査し、是正措置を実施すること
- 定期的に製品やプロセスのレビューを行い、バリデーションや検証を更新すること
- サプライチェーンパートナーの品質管理や追跡機能にも注意を払うこと
具体例
- 原材料の受入れ
- 医薬品の製造に使用する原材料の購入および設定された保管条件で厳密に保管されます
- 受入試験として、規格通り(品質)のものかどうかの試験をします
- 受入試験に合格しないものは、廃棄または、返品されます
- 受入試験に合格し、その後保管されているものでも、使用可能な期限を超えると廃棄されます
- 返品、廃棄されていない適切な原材料のみが、医薬品製造に使用されます
- 医薬品の製造
- まず、作業を実施できる各タスクの各担当者は、適切な教育と訓練を受けていることが必要です。このバックボーンは、教育・訓練の体制が組織化されていることです。
- 原料を投入して、反応や混合して製造工程を進めます
- 製造工程は、厳格に設定された「作業指示書」に従い実施されます。予定以外の作業は、基本的には実施してはいけません
- 目標の品質も最初に設定されています。工程ごとの品質試験が実施され、行程毎の規格幅以内であれば、合格ですが、幅を外れれば、不合格です。
- 基本的に不合格になれば、それ以降の製造工程は進められずに、廃棄となります。これを製造の失敗と表現することにします。
- 作業は、「作業記録書」に必要事項のチェック、時刻や観測値および担当者などの情報を記載するようになっています。これをバッチレコードとも言います
- 作業指示書には、あらかじめ作業の方法、条件などが記載されており、それ以外の追加的作業の実施、作業の省略は、「逸脱」といいます。逸脱は、この製造の失敗原因となる場合もあります。
- 基本的には、逸脱はあってはなりませんが、品質に大きな影響を与えるものと、そうでないものに分類されて評価されます。
- 大きな影響を与えると判断されると製造は失敗と判断され、ここで中止となります
- 各製造工程での品質試験の結果で、軽微な規格値からのはみ出しでは、この製造の結果得られる医薬品の品質に影響があるのかどうかについて明確には分からない場合は、製造は継続されます。最終的に医薬品となった段階での品質試験の結果から判断されることになります
- 製品の品質試験
- この製造の結果得られた医薬品は、最初に設定された品質試験項目毎に規格幅と実測値が確認され、下回っても上回っても不合格になります。試験担当はQC部門です。
- 最終判断
- 不合格品は、医薬品として流通させてはいけません。廃棄処分など適切に処分します
- ここで、最終的に医薬品として流通させても良いかどうかを判断する部署は、QA部門です。
- 以下の文書から総合的に判断されます
- 原材料の適格性 (バイオロジクスの場合、TSE, BSEなどの情報も必要)
- 使用する装置、設備、施設 (整備、点検)
- 製造指図書
- 作業記録 (予定通りに行われたか? 工程ごとの品質幅、作業時間、逸脱内容、作業実施状況、数値など)
- 品質規格値
- 品質試験の結果
医薬品メーカーのタイプ
- 原材料を外部から調達して、ミックスして錠剤やボトル製品にするタイプ
- 上記に加えて、原材料を用いて化学反応をさせて独自の原料を作る工程を持つタイプ
編集履歴
2020/12/25 Hr.HARIKIRI 2020/12/27、追記(医薬品メーカーのタイプ) 2023/10/15, 追記(GMP Complianceについて)