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  • [Bio-Edu] バイオ医薬品の製造で使用するTFF膜の管理 / バリデーションについて[2023/11/12]

    [Bio-Edu] バイオ医薬品の製造で使用するTFF膜の管理 / バリデーションについて[2023/11/12]

    はじめに

    バイオ医薬品(biopharmaceutical)では,限外ろ過膜によるプロダクトの濃縮やバッファー置換が,必ず1つは,プロセスとして組み込まれている.TFF膜は高価であり再利用されて,繰り返し製造がおこなわれる.TFF膜の性能や洗浄不十分によるキャリーオバーなどが生じるリスクがあるが,プロダクトの品質を一定に保つためには,TFF膜の性能,キャリーオーバー管理は重要な項目である.

    TFFの使用期限に関わる評価パラメータは,キャリーオーバーと性能です.キャリーオーバー(carryover)とは,前回の使用でクリーニングしきれなかった物質の持ち越しです.性能(performance)はろ過するものはろ過し,補足するものは補足する,というろ過能力とろ過流速です.

    TFF膜の寿命(lifespan)を確認するアプローチには,前向き評価,同時評価があります.

    1. 前向き評価(prospective validation) : 製造承認申請前にデータを取得する.
    2. 同時評価(concurrent validation) : 実製造スケジュールに組み込まれる.

    どちらのアプローチをとるかはを判断しなければなりません.

    1. 実製造スケジュールがタイトである場合は,予め評価データを取得する(prospective validation).その場合,製造承認申請データとして取得する期間が余分に必要となる.
    2. 同時評価(concurrent validation)とする場合は,実製造スケジュールに影響を及ぼさない場合に採用できる

    評価パラメータ

    1. 洗浄条件(薬剤,蒸気など各種パラメータ)
    2. 経年劣化
    3. プロダクト,エンドトキシン,不純物残存量(carryover)
    4. ろ過性能

    評価項目と方法など

    1. NWP (Normalized Water Permeation)
    2. バイオバーデン
    3. Host Cell DNA
    4. Host Cell Protein
    5. 収率
    6. 完全性試験(巨大な穴によるリーク)
    7. TMP(膜貫通圧; TMP対フラックス曲線)
    8. FTIR(フーリエ変換赤外)やラマン分光法による膜の状態分析(タンパク質蓄積など)
    9. 定期的なブランク分析(例えば水により運転し,リークする物質の分析,上記に記載の試験の実施,HPLC分析,ELISA,SDS-PAGE分析,TOC分析)

    前向きバリデーション

    前向き評価(prospective validation)小規模の膜システムを使用して寿命(lifetime)を評価パラメータから評価するアプローチです.その評価を使用後20回毎に行ったとします.その結果120回が使用可能(resusable)と判断された場合,実製造スケールでの使用には,その回数以内での使用期限を規定できます.例えば100回の使用が可能と規定します.

    同時バリデーション

    同時バリデーション(concurrent validation)は,例えば,他の事例から100回の使用が可能である情報があったとします.そこで使用目標回数を100回と定めて実製造を開始し,同時に同時バリデーションをスケジュールに組み込みます.

    用語

    NWP: Nomalized Water Permeability

    NWPとは、ノーマライズド・ウォーター・パーミアビリティ(Normalized Water Permeability)の略で、TFFのメンブレンの透過性を表す指標です.NWPは、メンブレンの孔径や材質、水の流量や圧力,温度などによって変化します。NWPが高いほど、メンブレンの透過性が高く、ろ過流量が大きくなります。NWPが低いほど、メンブレンの透過性が低く、ろ過流量が小さくなります。NWPは、メンブレンの性能や劣化の評価に用いられます.NWPの計算式は以下の通りです。

    NWP=PJ​×Sμ​

    J: 水の透過流速(単位面積あたりの水の流量,L/h/m2)
    P: メンブレンにかかる圧力(bar)
    μ: 水の粘度(?, この式に納得できないので,後日調べて訂正予定)
    S: メンブレンの有効面積(m2)
    NWPの単位は、L/m2/h/bar

    参考文献

    Lifetime Studies for Membrane Reuse: Principles and Case Studies – BioPharm, 2007

    Lifetime Studies for Membrane Reuse: Principles and Case Studies (biopharminternational.com)

    Protein Concentration and Diafiltration by Tangential flow Filtration – MILLIPORE

    MILLIPORE_TFF.pdf (huji.ac.il)

    KrosFlo® KMPi TFF System – REPLIGEN

    KrosFlo® KMPi Tangential Flow Filtration (TFF) Systems | Repligen

    MF / UF技術の進展と展望

    MF / UF技術の進展と展望 (jst.go.jp)

    Validation Guide.

    T-Series TFF Cassettes with Delta Membrane USTR 2661 – PALL – For use with Centramate™ and Centrasette™ TFF Systems

    12.8028_USTR2661(2)_T-Series_Cassettes_Delta_TS_VG_EN.pdf

    TangenX® TFF Cassette Air Integrity Testing – REPLIGEN

    IF.UG.027.pdf (repligen.com)

    Protocol Guide

    Pellicon(R) Ultrafiltration (UF)/Diafiltration (DF) Operations – Millipore

    rf1159en-mk.pdf (sigmaaldrich.com)

    Evaluation of Novel Large Cut-Off Ultrafiltration Membranes for Adenovirus Serotype 5 (Ad5) Concentration (2014)

    Summary: 500kDa cut-off used for Ad5 concentration, 10-fold concentration factor with 100% recovery.

    Evaluation of Novel Large Cut-Off Ultrafiltration Membranes for Adenovirus Serotype 5 (Ad5) Concentration | PLOS ONE

    編集履歴

    2023/11/12, MR.HARIKIRI