プロセスバリデーション
PV 3ロットと口癖のように言うが,現在のICHでは3ロットは基本的に要求しておらず,以下の説明にあるように「一貫して所定の仕様や品質基準を満たす」のかどうかを見るためには,複数回の実行が必要となる.これまで慣行として,3ロットの実行があった.しかし,3ロット実施したからといって,その評価結果として,一貫して所定の仕様,品質基準を満たしていないこともあり得る.例えば,少し幅のある結果だった場合,その幅をもうすこし知るために追加の1ロット,2ロットと実行する場合もあるだろう.逆に,一回の実行でこれまでの実績から「一貫して所定の仕様,品質基準を満たしている」と判断できる場合もある.ICHには,これらのことは,リスクに基づくアプローチや科学的根拠に基づくプロセス設計,即ち,「継続的バリデーション」や「製造プロセス設計」に関わっている.
バリデーションとクオリフィケーション
Q : 医薬品の開発や製造において,validationやqualificationとは
Copilot : 医薬品の開発や製造におけるvalidation(バリデーション)とqualification(適格性確認)は、品質保証と規制準拠を確保するための重要なプロセスです。それぞれの意味と目的を以下に説明します。
Validation(バリデーション)
- 定義: 製品やプロセスが一貫して所定の仕様や品質基準を満たすことを確認するシステム的な検証活動。
- 対象:
- プロセスバリデーション: 製造工程全体が安定して正しい結果を生み出すことを確認。例示: 培養・精製を実行しインプロセス試験(IPC)や得られる原薬が一貫(~3ロットなど)して仕様・品質基準を満たすかの評価.
- 清浄度バリデーション: 製造設備が汚染リスクを排除するように清浄管理されていることを確認。例示: 据え付け型製造タンクの洗浄の手順や能力の評価.
- 方法バリデーション: 試験法が正確で信頼性があり、製品特性を適切に測定できることを保証。例示: 分析バリデーション.
- 例: 新しい医薬品の製造プロセスを検証して、そのプロセスが一貫して高品質な製品を生産することを保証する。
Qualification(適格性確認)
- 定義: 設備、システム、または材料が医薬品製造において適切に機能し、その目的に適していることを確認するプロセス。
- 段階:
- 設計時適格性確認(DQ: Design Qualification): 設計段階での適格性を確認。
- 設置時適格性確認(IQ: Installation Qualification): 設置や取り付けが規定通りに行われたか確認。
- 運転時適格性確認(OQ: Operational Qualification): 設備が正常に作動し、指定された条件を満たすかを確認。
- 性能時適格性確認(PQ: Performance Qualification): 実際の稼働条件で適格性を確認。
- 例: 新しい製造装置を導入した場合、その設計や運用が規格を満たしていることを各段階で確認する。
違いと関係性
- 違い: Validationは「プロセス」や「結果」に重点を置きます。一方でQualificationは「設備」や「システム」に焦点を当てます。
- 関係性: QualificationはValidationの一部として捉えられることがあり、設備や装置の適格性を確認した後に、それを使ったプロセス全体のValidationを行います。
これらのプロセスは、医薬品の安全性、有効性、および品質を保証するために必須です。
バリデーションの回数
Q : CHでは,バリデーションでの実行回数は3回と規定されているか,最近では3回の実行ということは言われくなくなったと思うか,それは本当か
Copilot : ICH(国際会議調和)ガイドラインにおいて、バリデーションの実行回数について直接「3回」という具体的な規定は存在していません。ただし、プロセスバリデーションでは、従来の業界慣行として3回の実行(通称「PVバッチ」)が一般的に行われてきました。この「3回」の基準は、過去の経験や統計に基づいて、一貫性のあるプロセスの確認に十分であると考えられてきたものです。
しかし、最近の規制やガイドライン(例えば、ICH Q8, Q9, Q10, Q11)では、リスクに基づくアプローチや科学的根拠に基づくプロセス設計が強調されるようになりました。その結果、バリデーションの実行回数を厳密に「3回」とする必要性が薄れ、以下のような方向に変化しています:
- 継続的プロセスバリデーション(Continued Process Verification): 製造のライフサイクル全体でプロセスの一貫性を評価。
- 製造プロセスが日常の生産活動を通じて一貫して行われているかどうかを確認するための手法です。生産プロセスにおけるデータを継続的にモニタリングし、品質と一貫性が保証されていることを確認します。これにより、プロセスのパフォーマンスや製品の品質をリアルタイムで評価することが可能です。
- 長期的視点
- コンカレントプロセスバリデーション (Concurrent Validation)
- コンカレントバリデーションは、通常の生産活動中にバリデーションを実施する方法です。この場合、製品はバリデーションデータが取得されている間に製造されますが、バリデーションが終了するまで出荷が保留されることがあります。コンカレントバリデーションは、例えば新しいバッチや設備を導入した際に、迅速な確認が必要な場合に使用されることが多いです。
- 短期的視点
- 製造プロセス設計(Process Design): 実験や統計的分析に基づき必要な回数を柔軟に設定。
したがって、「3回の実行」が絶対的ではなくなり、製造プロセスや製品特性に応じて適切な実行回数を設定することが推奨されています。
具体的には,日本のGMP事例集(2022年版)のGMP13-30には以下の質問/回答があります.要件は,
- プロセスバリデーションとしてコンカレントバリデーションを実施する合理的な根拠
- バリデーション計画書に予めPV回数が明記されていること
- PVの完了を前提に出荷の判断が可能
- GMP適合性調査権者に相談すること
- 希少疾患では
- コンカレントバリデーション実施の合理的な根拠及びロット構成について、バリデーション計画書にあらかじめ明記
- GMP適合性調査実施前までに1ロットで商業生産スケールでの確認を実施
- 承認取得後,残りの2回のPVの実施で差し支えない
・GMP事例集(2022年版)について ( 令和04年04月28日事務連絡)
GMP13―30(プロセスバリデーション)[問]バリデーション指針(5)②ア及びイ(エ)に「通常、当該工程を経た製品について、その製造所からの出荷の可否を決定する前までに、PVが完了していること」とあるが、例えば、年1回しか生産しない製品であっても製品の出荷の前までに原則3ロットでのプロセスバリデーションを実施しなければならないのか。 [答]プロセスバリデーションとしてコンカレントバリデーションを実施する合理的な根拠があり、それがバリデーション計画書にあらかじめ明記されている場合には、製品の出荷の前までに3ロットでのプロセスバリデーションを実施しなくても認められる場合がある。GMP適合性調査権者に相談すること。なお、希少疾病医薬品に指定されている医薬品については、コンカレントバリデーションを採用し、GMP適合性調査実施前までに1ロットで商業生産スケールでの確認を実施し、承認取得後に残りの2ロットの商業生産スケールでの確認を行うことで差し支えない。ただし、コンカレントバリデーションを実施する合理的な根拠及びロット構成について、バリデーション計画書にあらかじめ明記しておくこと。
編集履歴
2025/03/23 Mrはりきり,Copilot