はじめに
「試験記録の保管期間=5年」という記述はよく目にしますが、**果たしてそれが法的根拠に基づくものなのか?**について、しっかり確認してみましょう。
結論:5年という保管期間は、法的根拠に基づいているが、一律ではない
日本のGMP省令における記録の保存期間
医薬品GMP省令(厚生労働省令第179号)の該当条文:
第13条(記録の作成及び保存)
~中略~
二 作成した記録は、当該医薬品の製造販売後5年間又は当該医薬品の使用期限の終了後1年間のいずれか長い期間保存すること。
解釈ポイント
条項 | 解釈 |
---|---|
「製造販売後5年間」 | いわゆる「製造年月日」から5年ということが多い(ただし製造販売業者の定義による) |
「使用期限の終了後1年間」 | 例えば使用期限が3年の場合 → 製造から4年の保管義務 |
「いずれか長い期間」 | 実務上はどちらか長い方を取る。製品によって変わる。 |
つまり、「5年」はあくまで一つの目安であり、製品の使用期限によってはそれ以上保管が必要になる場合があります。
実務例での比較
使用期限 | GMP上の保存期間(いずれか長い方) |
---|---|
3年 | 3年+1年=4年 < 5年 → 5年保存 |
5年 | 5年+1年=6年 > 5年 → 6年保存 |
7年 | 7年+1年=8年 > 5年 → 8年保存 |
海外基準(補足)
EU-GMP(Annex 11など)やFDA(21 CFR Part 211)でも:
- 原則は「使用期限後1年」または「5年間」、もしくは「製造販売後の最終ロットの流通期間を含めて一定期間」などの規定があり、日本と同様に記録保管期間は義務です。
- 特定の国・製品・契約で長期(10年など)が求められることもあります。
まとめ
質問 | 回答 |
---|---|
5年という数字に法的根拠はある? | はい、日本GMP省令第13条に基づく |
5年でよい? | 製品の使用期限によっては6年・8年など長くなる場合あり |
実務的な扱いは? | 一律「5年保存」が多いが、製品ごとに「使用期限+1年」と比較して判断が必要 |
編集履歴
2025/04/09 Mrはりきり