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rAAV vectorの投与量
遺伝子治療薬(in vivo)では、遺伝子を運ぶベクターとして、アデノ随伴ウイルス(AAV)が使用されます。AAVの殻の部分をCapsidといいますが、そこに目的の遺伝子が挿入されてrecombinant AAV (rAAV)が設計され、動物細胞や微生物でrAAVが製造されます。rAAVの数は、vector genomes (vg)単位で表されます。
non-clinical(動物試験)の結果をもとに、ヒトでの試験(臨床試験)の試験デザインが立てられます。
rAAVを使用した遺伝子治療薬の開発では、副作用が無く且つ治療効果が期待できるrAAV投与量が臨床試験で確認される必要があります。
そのrAAVの必要な投与量は、どれくらいなのかは、そのrAAVの品質、対象疾患などで異なるため、一概に言うことはできませんが、どれくらいの範囲になるのかは、先行する臨床試験や文献から理解することが可能です。
non-clinical
参考文献1)のタイトルは、「ムコ多糖症VI型の治療のために静脈内投与されたAAV2 / 8ベクターの非臨床的安全性と有効性」です。非臨床試験、すなわち動物実験を行い、静脈投与における安全投与量での有効な量が示されています。以下の何の試験においても毒性はなかったとのことです。
試験 (マウス:C57/BL6-Tg ARSBC91S/MPS VI)、投与後の15日後(D15)、150日後(D150)及び180日後(D180)で動物の状態を検査しています。
投与
- 毒性試験(toxicity) : 2e13 vg/kg, D15, D180/マウス
- 生体分布(biodistribution) : 2e12 vg/kg, D15, D180/マウス
- 生殖細胞伝達 (Germline transmission) : 2e12 vg/kg, D150/マウス
- 遺伝子発現試験(expressi) : 2e12 vg/kg, D150/ウサギ
- 用量反復(dose response) : 2e11, 6e11, 2e12 vg/kg, D150, D180/マウス
評価
- hematology
- clinical chemistry
- necropsy
- histopathology
- general health, phiysical
- functional and neurobehavioral examination
- body weight
- body temperature
- food intake
Non-clinical Safety and Efficacy of an AAV2/8 Vector Administered Intravenously for Treatment of Mucopolysaccharidosis Type VI, 2017
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5552066/
Clinical
最近、あるrAAVを使用した臨床試験で、死亡例が出てしまいClinical Holdになりました。その濃度のオーダーは、1e14/kgでしたが、肝臓をターゲットにするrAAV vectorでした。死亡原因については、今後、解析結果がレポートされるものと思われます。
患者さんへの投与は、1回の投与で、必要な遺伝子としてrAVVを必要十分に投与できれば、理論的には、その1回の投与で治療は終了します。その投与量の決定として、先行する臨床試験では、2回の投与、2濃度の投与量、などについて臨床デザインに含まれています。
臨床事例
rAAVの臨床投与量(clinical)
2020/02に、BIOMARINが開発されたした血友病Aの遺伝子治療薬(rAAV5)が承認されました。同様にROCHEに買収されたSPARKも血友病Aの開発を行っています。
以下のようにBioMarinの臨床試験で4e13 vg/kgを投与しているということは、動物試験では、さらに10倍程度は高い投与量での安全性の確認をしているのでは無いかと考えられます。
BioMarin (SPK-8016)
Spark (SPK-8016)
まとめ
BIOMARINは、低容量6e12、高容量4e13~6e13 vg/kgで臨床試験を行っています。高容量では、その後の2年間、出血制御は良好な状態を維持していると言っています。
SPARKのケース(SPK-8016)は、BIOMARINより1/10から1/100です。
編集履歴
2020/07/31 Hr.Harikiri
2020/09/19 追記 (臨床投与量から動物試験での投与量を推察)
2024/01/15 文言整備