【実務で迷わない!】PPQとPVの違いとは?国際的な位置づけとバリデーション活動全体の流れを解説

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プロセスバリデーション(PV)は、医薬品製造において最も基本かつ重要な品質保証活動のひとつです。しかし、実務の現場では「PV」「PPQ」「PQ」といった類似用語が混在し、とくに「PVとPPQの違いが曖昧なまま使われている」ことも少なくありません。

この記事では、まずPPQとPVの違いを日米欧の規制視点から明確化し、つづいてPPQがPVの一部であることを「PV実施計画書〜報告書までの全体フロー」とともに網羅的に解説します。


◆ 1. PPQとPVの違いとは? ― 日米欧の規制視点から

✅ FDA(米国)の位置づけ

米国FDAでは、プロセスバリデーション(Process Validation)を以下の3つのステージに明確に分類しています:

ステージ名称内容
Stage 1プロセス設計(Process Design)製造プロセスを設計・最適化する
Stage 2プロセス性能適格性評価(PPQ)商用スケールで製品を製造し、再現性を検証
Stage 3継続的プロセスバリデーション(CPV)商用製造中の継続的な品質モニタリング

👉 このうち**Stage 2に相当するのがPPQ(Process Performance Qualification)**であり、PPQはPVの一部と明確に位置付けられています。


✅ EU(欧州)の位置づけ

EU(EudraLex Annex 15)では「プロセスバリデーション」という包括的概念が明記されており、PPQという単語自体は登場しません。ただし、商用製造前にプロセスが一貫性を持って再現できることを複数バッチで確認することが要求されており、その内容はFDAのPPQと同義です。

また、Annex 15では**設備の性能評価(PQ)とプロセスの妥当性確認(PV)**を明確に区別しており、文書構造がきっちり整備されています。


✅ 日本(GMP省令)の位置づけ

日本のGMP省令では「PPQ」という言葉は出てきませんが、「プロセスバリデーション」という用語は明記されています。また、PMDAの査察・照会でも近年はFDAやICHの用語体系がそのまま使用されており、実務的にはPPQはPVの一部と理解して対応するのがスタンダードです。


✅ 要約:PPQとPVの違い(日米欧比較表)

区分PVの定義PPQの扱い備考
FDA3ステージのライフサイクル型PVステージ2として明確に定義PV ⊃ PPQ の構造
EUプロセスの再現性確認をPVに含む用語としてのPPQはなし内容的にはPPQと同義
日本GMP省令でPVを規定PPQ用語なし(実務上導入)規制より運用に依存

◆ 2. PPQはPVの一部である ― 全体ステップで理解する

PPQは、プロセスバリデーションの中でも「実際の商用スケール製造によってプロセスの妥当性を検証するステップ」であり、全体から見れば中盤に位置するPVステージ2にあたります。

以下に、PV全体を「計画書から報告書まで」の流れとして構造化した図を示します。


✅ 全体ステップ:PV実施計画書から報告書までの構成(網羅的フロー)

① PV実施計画書(PVプロトコル)作成
 ├─ スコープ・試験項目・成功基準を定義
 ↓
② PPQバッチの製造(Stage 2)
 ├─ 商用スケールで連続2〜3バッチ製造
 ├─ 製造記録・試験・逸脱処理を実施
 ↓
③ データ収集・評価・統計解析
 ├─ 試験結果・プロセスデータの統計評価
 ↓
④ 成功判定とSOP改訂
 ├─ バリデーション成功可否を社内承認
 ├─ BPRやSOPの更新
 ↓
⑤ PV報告書の作成・承認(Final Report)
 ├─ 評価結果・結論・今後の対応方針を記載
 ↓
⑥ CPV(Stage 3)への移行
 ├─ 継続的モニタリング体制へ

このうち、PPQ(Step②)だけを切り出して「PPQ活動」と呼びますが、PV全体の一部に過ぎません。


◆ 3. 含まれるタスクの具体例

PVの実施には以下のタスク群が含まれます:

カテゴリタスク概要
計画PV実施計画書作成スコープ・基準・試験内容を事前定義
実行PPQバッチ製造商用スケールで3バッチ前後製造
試験出荷試験、IPC、安定性初期試験試験室および製造部門で実施
評価統計解析(CpK、トレンド)プロセスの変動性を解析
文書PV報告書作成結果・評価・CPV計画を記録
継続CPV計画と移行本格製造下での監視体制構築

◆ 4. 実務での注意点と運用

  • PPQだけでPVが完了するわけではない
     → 試験結果、統計解析、逸脱評価、最終判定が不可欠です。
  • PV報告書が承認されて初めて「PV完了」
     → 承認なくCPVへ移行するのは重大なGMP逸脱です。
  • 社内では「PVバッチ」と「PPQバッチ」の混用に注意
     → 文書上は明確に区別し、「これはPVステージ2(PPQ)である」と明記しましょう。

◆ まとめ:PPQとPVの違いを正しく理解し、文書体系と対応を整える

  • PPQ(Process Performance Qualification)は、PVの一部(ステージ2)であり、PV全体を構成する中核ステップです。
  • ✅ 日米欧で用語や表現に違いはありますが、実質的には同じプロセスを指しており、共通理解が求められます
  • ✅ 実務では、PV計画書 → PPQ製造 → 試験 → 統計解析 → 報告書作成 → CPV移行という一貫した流れで活動が行われており、その中でPPQは中心的役割を果たします。

正しい理解と文書管理は、査察対応の信頼性だけでなく、組織全体の品質文化を支える基盤です。ぜひこの機会に、社内のバリデーション体系を再確認してみてください。

2025/06/30