Q : タンパク質精製用のLab(実験室)の準備について教えてください
A : 目的のタンパク質の生産がどの細胞であるか,そのタンパク質は分泌系か否か,などにより準備する装置は異なってくる.
フロー
- 生産系 : 培養装置
- 動物細胞 : 動物細胞用培養装置
- 大腸菌 : Fermenter
- 酵母 : Fermetner
- 回収
- 動物細胞,酵母では目的物は分泌されるため遠心機で培養上清を分離回収する
- 大腸菌では,目的物はInclusion Body (IB),すなわち不溶性画分として産生されるため,遠心機に加えて細胞破砕装置が必要となる
- 途中保管用の冷凍庫 : -20℃は凍っているとは言えない.タンパク質溶液を凍結して安定的に保管することはできない.できれば,-80℃冷凍庫がベスト.
- できれば,-80℃冷凍庫
- なければ,-40℃冷凍庫
- それでも難しい場合は,安価な-20℃以下の冷蔵庫
- Refoldingは必要か : 目的物がIBとして得られる場合,タンパク変性材,例えば尿素,塩酸グアニジンで可溶化し,さらに,アミノ酸組成にシステインを含む場合は,還元剤である2-Mercaptoethanolや酸化剤であるシスタミン塩酸塩あるいは金属塩を使用して分子内SS結合を正しく作ってやる必要がある.
- 希釈法 : Refolding法としては一般的方法.10倍希釈に対応する容器が必要である.
- カラム法 : カラムに目的物を結合させた状態で,Refolding 試薬であるたんぱく変性材などを取り除き,その後,カラムから抽出する方法.目的タンパク質が結合できるレジンとその量,および必要なサイズのカラムが必要である.
- カラム精製: 使用するバッファは,できるだけStock Solutionとして用意する.
- カラムサイズ (0.1mL~100mL)
- Stepwise (max: 6CV) or Gradient
- Resinの種類
- カラム精製の順序
- カラム再生
- 0.1N NaOH, 6M GuHCl, 1% Acetic Acid
- カラム保存
- 3M NaCL
- 次回の検討に使用するまで5℃保管 : 冷蔵庫
- 膜処理
- 濃縮 : タンパク質の濃縮し水分をろ過液として分離することで,体積を少なくする
- バッファ組成交換 : 濃縮により減少した体積分を交換したいバッファで補充してやると組成が置換される.何度も行うことで目的のバッファ組成に変更できる.
- 膜分画
- MWCO値 : 目的の分子量(MW)を目安に適当なMWCO値の膜を選択する.
- メーカーにより性能が異なる : メーカーによってMWCO値と性能は異なるため,実際の目的タンパク質で確認する必要がある.
- バッファ組成ごとに性能が異なる : 伝導度,塩の種類,pHとタンパク質の物性の組み合わせにより,そのタンパク質の立体構造や表面電荷が変化することで,タンパク質の大きさとしての「膨らみ具合」,「粘度」や膜との親和性に違いが生じる.その結果,処理時間の変化,ろ過液への漏れにつながる.
- Endotoxin除去
- 混入リスクの低減
- シンプルな配管
- バッファ調製用の水
- 限外ろ過膜による分子量カット
材料
- カラム : ディスポカラム(Endotoxin混入対策)
- 0.1mLカラム : 市販のスピンカラムの中身を抜いて利用
- 0.5mLカラム : PD-10 Emptyカラム
- 5.0mLカラム : Millipore C10/Millipreの中身を抜いて利用
- 50mLカラム : BioRad Econocolumn/5cmφ
- 送液ポンプ : MasterFlex Pump
- 限外濾過膜
- 材質
- 強度はPES, 低吸着はセルロース系
- MWCO
- 5kDa
- 10kDa: 一般的
- 30kDa: Albumin, IgG
- 50kDa
- 100kDa: 低分子量タンパク質のろ過によるEndotoxin除去
- 1,000kDa: 清澄ろ過
- 製品
- VIVASPIN
- VIVACELL
- VIVAFLOW 50 , 200
- 送液ポンプ : MasterFlex Pump
- 再生
- 6M GuHCl→0.1N NaOH→water
- 保管
- 3M NaCl
- 材質
- 分析装置
- RP-HPLC
- SDS-PAGE分析装置
- ゲル振とう器
- 分光光度計
- 液体クロマトグラフィー装置(AKTA)
- TFF System
ストックバッファー
- 3M NaCl (希釈して使用)
- 0.15M NaCl (Saline) dilution by water
- 0.3M NaCl
- 0.5M NaCl
- 6M GdmCl
- 8M Urea
- 1M Imidazole
- 溶解時pH8
- 1M Tris-HCl (pH7.5), 1M Tris-HCl(pH8.0)
- 25mM Tris-HCl (dilution by water)
- 1M Arginine, 0.25M Tris (HCl) pH9
- 33mM Acetic Acid (pH3程度)
- 0.1N NaOH
精製検討の実際
- 分析法
- SDS-PAGE: SS結合の開裂の問題
- 中性pHのSDS-PAGE (Bis-Tris)
- 通常のアルカリ性のSDS-PAGE
- BlueNativePAGE
- 標準のサンプルバッファー
- 1M Tris-HCl (pH7.5)
- SDS-PAGE: SS結合の開裂の問題
- モニタリング
- RP-HPLC
- 分析時間: 5分
- A220nm
- PolymerLaboratorys, A4000
- A buffer: 0.1% TFA
- B buffer: 90% Acetonitrile, 0.1% TFA
- RP-HPLC
- スモールスケール検討
- クロマト
- 膜分画
- MWCOによる分画では、バッファ組成、遠心G、クロスフロー流速とTMPにより性能が異なる
- 沈殿法
- Refolding
- サンプルの状態の目視観察
- 泡立ち
- タンパク質濃度の推定
- 試験管を激しく振ったりする
- 色
- 色は不純物、タンパク質との分離の具合
- 表面張力
- タンパク質濃度、核酸、糖
- 泡立ち
Eco-Study
- 基本的は、Stepwiseによるカラム実験とRP-HPLC分析を同時並行して回し、サンプルが整えばSDS-PAGE分析に投入する。これをシームレスに慌ただしく実行する
- マルエム・チュープSS14 (5ml)に充填カラム(0.5m)を載せる
- Stepwiseで、サンプルアプライ(好きなだけ/3mL/tube)、バッファ(3mL)添加毎にチューブを交換しフラクションを回収(3mL/tube)
- 得られたフラクションはその都度、次のバッファー(3mL)をカラムに載せたら、即、RP-HPLC システムに持って行き、オートサンプラーに載せ、すぐに実験室に戻る。このサイクルを回す
- バッファ組成は、実験の前に予め定めているが、RP-HPLCの結果も同時に確認しながら、次のカラム条件のアイデアを考え、臨機応変にバッファー組成の追加、変更を試す
- ある程度サンプルが揃えば、SDS-PAGEを同時並行的に実施する
- リアルタイムなバッファ調整のコツ
- 充填カラムに載せるバッファ組成の変更を思い付いたとき、素早くバッファを作る。それには、複数のストックバッファとピペットを準備しておく。
- 3M NaClは用意している。0.15M NaClを作りたい時、20倍希釈すればいい。3mLを調製するには、1/10量は、0.3mL, 1/20量は、その半分(0.15mL)なので、tubeに3mLのwaterをとり、0.15mLを抜き取って、3mM NaClを0.15mL添加すれば良い。これを全量、充填カラムに載せる。