CTDの構成はどうなっているか? [2025/05/06]

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CTD(Common Technical Document:共通技術文書)は、新薬の承認申請資料を国際的に統一されたフォーマットで提出するための文書構成です。
日本・アメリカ・EUなどの規制当局が共通で使用しています。


🔹 CTDの基本構成(モジュール構造)

CTDは5つの**モジュール(Module 1〜5)**から構成され、それぞれの役割が明確に分かれています。

モジュール番号名称内容概要
Module 1地域別情報(Administrative Information)各国ごとに異なる部分(例:申請書類、添付文書、GCP適合性資料など)
日本独自の様式等が含まれる
Module 2CTD概要(Common Technical Document Summaries)Module 3〜5の要点をまとめた「概要・総括」
・品質概要(2.3)
・非臨床概要(2.4〜2.6)
・臨床概要(2.7)など
Module 3品質情報(Quality)原薬・製剤の品質、製造、分析法、安定性など(旧:CMC資料)
Module 4非臨床試験データ(Nonclinical Study Reports)動物試験などの安全性評価(毒性、薬理、薬物動態)
Module 5臨床試験データ(Clinical Study Reports)治験など人に対する試験結果(有効性・安全性の証拠)

🔸 各モジュールの補足ポイント

◆ Module 1(地域独自)

  • 日本では「添付資料」「申請書」などが該当
  • eCTDでは「M1」は国ごとのテンプレートあり(ICH外)

◆ Module 2(サマリー)

  • 膨大なModule 3〜5を読む前に、要点を把握するための文書
  • 特に審査官がレビュー時に重視するモジュール

◆ Module 3(品質パート)

  • 原薬(Drug Substance)と製剤(Drug Product)の情報が含まれる
  • バイオ医薬品の場合も同様の構成

◆ Module 4(非臨床パート)

  • 動物実験ベースの毒性試験(単回・反復・遺伝毒性・生殖毒性など)
  • 薬物動態(ADME)や安全性薬理も含む

◆ Module 5(臨床パート)

  • 臨床試験(第1相〜第3相)などの結果
  • 個別の試験報告書だけでなく、統合解析(例:統合安全性報告書)も含む

📦 図式:CTD構成イメージ

sqlコピーする編集するCTD 全体
├── Module 1: 地域別情報(国別で異なる)
├── Module 2: サマリー(各パートの概要)
├── Module 3: 品質情報(化学・製造)
├── Module 4: 非臨床試験(毒性・薬理など)
└── Module 5: 臨床試験(治験データなど)

📝 補足:電子CTD(eCTD)

  • 上記CTD構成を**電子ファイル形式(XML+PDF等)**で提出する仕組み
  • ICH M8で仕様が定義されており、現在はeCTDでの提出が主流です

Module 1の構成

CTDの Module 1 は、各国の規制要件に基づく地域別の情報をまとめる部分であり、**ICH共通仕様には含まれていない(非共通)**モジュールです。
そのため、日本・米国・EUなどで構成が異なります。

ここでは、日本のCTD Module 1の構成を中心に、基本的な内容を解説します。


🔹 CTD Module 1(日本版)の構成概要

📁 1.0 表紙および提出書類に関する情報

  • 1.0.1 表紙
  • 1.0.2 添付資料一覧表
  • 1.0.3 提出に関する説明資料(オプション)

📁 1.1 申請情報(Administrative Information)

  • 1.1.1 医薬品製造販売承認申請書
  • 1.1.2 添付文書(案)
  • 1.1.3 製品情報概要
  • 1.1.4 日本語ラベル(表示)案

📁 1.2 GCP等に関する情報(治験実施体制)

  • 1.2.1 治験実施に関する情報一覧
  • 1.2.2 治験責任医師・実施医療機関一覧
  • 1.2.3 治験契約書の写し
  • 1.2.4 倫理委員会関連資料
  • 1.2.5 治験薬概要書(IB)
  • 1.2.6 同意文書等のサンプル

📁 1.3 製造管理および品質管理に関する情報(GMP適合性等)

  • 1.3.1 製造方法概要書
  • 1.3.2 GMP適合性調査申請資料
  • 1.3.3 製造施設一覧・構造図

📁 1.4 医薬品リスク管理計画(RMP)

  • 1.4.1 医薬品リスク管理計画書
  • 1.4.2 添付文書との関連資料

📁 1.5 費用・審査関係資料(オプション)

  • 1.5.1 審査費用の支払証明等(提出状況)

🗂️ Module 1は「国ごとの提出ルールに準拠」

地域Module 1の特徴
日本添付文書、治験情報、GMP資料、RMPなどが含まれる
米国FDAフォーム、薬価関連文書、PATの使用などが含まれる
EUスマルタ(SmPC)、パッケージリーフレット、ラベル案などが必要

📝 補足:電子提出(eCTD)との関係

  • Module 1も**eCTD対応(構造フォルダ+XMLタグ)**で提出
  • 日本ではPMDAが定めるフォルダ構成に従って提出する(「1.1」「1.2」などのサブフォルダ)

Module 2の構成

CTDのModule 2は、モジュール3〜5(品質・非臨床・臨床)に関する概要(サマリー)をまとめた部分です。
規制当局(PMDA, FDA, EMAなど)が審査の際に最初に読む、非常に重要なモジュールです。


🔹 CTD Module 2 の構成概要

📁 2.1 CTDの概要(General Introduction)

  • CTD全体に関する簡単な紹介文(提出の背景、構成など)
  • 通常1〜2ページ程度の説明書き(日本では必須ではない)

📁 2.2 CTDサマリー(Overall CTD Table of Contents)

  • CTD全体(Modules 2〜5)の目次
  • 各セクションの構成を一覧形式で示す(eCTDでは自動生成も)

📁 2.3 品質に関する全体概要(Quality Overall Summary:QOS

  • Module 3(品質情報)の要約版
  • 原薬(Drug Substance)と製剤(Drug Product)に分かれた構成:
    • 2.3.S:原薬の概要(製造法、特性、規格など)
    • 2.3.P:製剤の概要(組成、製造、安定性など)

📁 2.4 非臨床概要(Nonclinical Overview)

  • Module 4(非臨床試験)の全体的な要約
  • 薬理・毒性・薬物動態など、安全性の評価まとめ

📁 2.5 臨床概要(Clinical Overview)

  • Module 5(臨床試験)の全体的な要約
  • 有効性、安全性、使用経験、ベネフィット/リスク評価など

📁 2.6 非臨床サマリー(Nonclinical Written and Tabulated Summaries)

  • 分野別の非臨床試験データを表形式+記述形式で要約
    • 2.6.1 薬力学(一次・二次・安全性)
    • 2.6.2 薬物動態(吸収、分布、代謝、排泄)
    • 2.6.3 毒性(急性、反復、生殖、発がん性など)

📁 2.7 臨床サマリー(Clinical Summary)

  • 臨床試験データの詳細なサマリー(記述+表)
    • 2.7.1 生物薬剤学・臨床薬理
    • 2.7.2 有効性
    • 2.7.3 安全性
    • 2.7.4 付録(統合データの表など)

🧭 構成図イメージ

objectivecコピーする編集するModule 2
├── 2.1 CTD概要
├── 2.2 CTDサマリー目次
├── 2.3 品質概要(QOS)
├── 2.4 非臨床概要
├── 2.5 臨床概要
├── 2.6 非臨床サマリー(詳細表)
└── 2.7 臨床サマリー(詳細表)

📌 Module 2のポイント

  • 審査官がまず読む要約セクション:評価の印象を左右する重要パート
  • 明快で簡潔な要約が求められる(資料本文はModule 3〜5に格納)
  • eCTDではPDFで提出されることが多く、各セクションにXMLタグが付与される

以下に、**CTD Module 2(特に2.4 非臨床概要 / 2.6 非臨床サマリー)**の作成に関連する:

  1. GLP要件の基本
  2. 毒性試験記載テンプレート(2.6 / 2.4 対応)
  3. 新規モダリティ(例:核酸医薬)における非臨床戦略の考え方

を順にご紹介します。


✅ ① GLP要件(非臨床試験)

🔸 GLP(Good Laboratory Practice)とは

  • 非臨床安全性試験の信頼性を確保するための国際的基準
  • 日本では**医薬品GLP省令(厚労省)**が適用
  • **CTD Module 4(原報)**だけでなく、Module 2(サマリー)にもGLP準拠の明記が求められる

📌 Module 2での記載例(2.6や2.4中)

コピーする編集する本試験は、OECD GLP基準および厚生労働省のGLP基準に準拠して実施された。
GLP適合性確認は実施機関のQA部門により行われ、試験責任者による署名済み最終報告書を取得している。

✅ ② 毒性試験の記載テンプレート(2.6.3向け)

🔹 サンプル構成:2.6.3「毒性に関する文書と表形式サマリー」

bashコピーする編集する【試験タイトル】
28日間反復投与毒性試験(ラット、経口投与)

【試験番号】
TOX-XYZ-001

【被験物質】
API(ロット番号:123456)

【試験機関・GLP適合】
ABC試験センター(OECD準拠)

【群構成】
対照群、高用量、中用量、低用量(各群10匹/性)

【評価項目】
臨床症状、体重、血液・血液生化学、器官重量、組織病理など

【主な結果】
- NOAEL:30 mg/kg/day(♂)、10 mg/kg/day(♀)
- 100 mg/kg群で肝障害(ALT, AST上昇)と脂肪変性を認めた

【考察】
→ 薬理作用と関連あり、可逆性を確認済。

📝 2.6には記述形式、表形式の両方が求められます(ICH M4Sに準拠)


✅ ③ 新規モダリティ(例:核酸医薬)の非臨床戦略

🔬 特性:

  • DNA/RNAベースの医薬品(例:アンチセンス、siRNA、mRNA、ASOなど)
  • 標的特異性が高く、毒性プロファイルが従来と異なる

📌 非臨床戦略のポイント(Module 2.4で総括)

評価項目留意点
薬理試験標的遺伝子の発現を確認するin vitro試験、動物種の選定(ヒトとの相同性)
PK試験分布(肝臓、腎臓への集積)、組織残留、消失経路の確認(代謝酵素不要)
毒性試験反復投与毒性(通常2種)、局所毒性(皮下注など)、免疫刺激性(Toll様受容体など)
遺伝毒性・発がん性一般に不要(ターゲット特異性と非組換え性に基づく)
免疫毒性必須、特に免疫活性化の有無(IL-6, INF-αなどの測定)
反芻動物への適応ヒトと近い動物種(例:サル)が必要な場合も多い

📄 Module 2.6/2.4ではどうまとめるか?

  • モダリティ特有の項目を明記し、ICHガイドラインとの整合性を示す
  • 必要な場合は、「評価不要」の理由も科学的に記載する
  • 例: 遺伝毒性試験は実施していない。本品は標的配列に特異的な20-merのASOであり、染色体DNAとの相互作用の可能性は極めて低く、既存のガイドライン(例:ICH S2(R1))に従い不要と判断した。

GLP対応チェックリスト for Module 2

(非臨床試験サマリー/概要用)
GLP Compliance Checklist for Module 2 (2.4 / 2.6)

チェック項目 / Item✅ Done備考 / Remarks
1. 各試験がGLP準拠で実施されたか記載している
Is GLP compliance clearly stated for each study?「本試験はGLP基準に準拠して実施された」と明記
2. 試験機関名・所在地を記載
Study facility name and location specifiedGLP認証機関名(例:○○研究所)
3. GLP適合性の根拠(監査、QA等)の記載
GLP certification or QA audit mentioned「QA部門により監査された」など
4. 試験責任者(Study Director)の署名記載
Study Director signature included in final report通常CSRまたは添付資料に署名あり
5. GLP未実施の場合、その理由を明確に説明
If not GLP, is justification clearly stated?「探索的試験のためGLP外で実施」などの記述
6. GLP準拠試験と非GLP試験を区別して記載
GLP and non-GLP studies distinguished in summary表や記述で区分けされているか
7. GLP対象外の試験領域を明記
Are GLP-exempt areas (e.g., pharmacology) acknowledged?薬理試験や探索PKはGLP外でも可とされることが多い
8. 試験実施年・期間が記載されている
Study period (start/end date) clearly shown記録の信頼性確保に必要
9. eCTD提出時にGLP適合表現がメタデータにも反映されている
GLP status reflected in eCTD metadata (if applicable)eCTDタグ情報に「GLP Yes/No」が設定されているか
10. 統合評価(Module 2.4)にGLP順守状況の総括がある
GLP summary included in 2.4 (Nonclinical Overview)例:「すべての毒性試験はGLP下で実施された」など

Module 3の構成

CTDのModule 3は、医薬品の**品質情報(Quality)をまとめるセクションです。
製品の
原薬(Drug Substance)製剤(Drug Product)**に関するあらゆる品質データが収められており、**CMC(Chemistry, Manufacturing and Controls)**に相当する部分です。


🔹 CTD Module 3の全体構成

Module 3は、次の2つの大きなブロックで構成されています:

mathematicaコピーする編集するModule 3: Quality
├── 3.2.S:原薬(Drug Substance)に関する情報
└── 3.2.P:製剤(Drug Product)に関する情報

このほか、3.1(目次)や3.3(参考資料)もあります。


📁 3.1 モジュール3の目次

  • Module 3 全体の構成と各セクションの目次一覧
    (eCTDではシステムによって自動生成される場合も)

📁 3.2.S 原薬(Drug Substance)に関する情報

セクション内容
3.2.S.1一般情報(名称、構造式、物理化学的性質など)
3.2.S.2製造方法(合成ルート、原料、工程管理など)
3.2.S.3特性解析(構造確認、不純物プロファイルなど)
3.2.S.4管理規格(試験項目、試験法、許容値)
3.2.S.5製造バッチ・バリデーションデータ(ロット試験結果)
3.2.S.6容器・包装(バルク品の容器情報)
3.2.S.7安定性(保存試験データ、推定有効期限)

📁 3.2.P 製剤(Drug Product)に関する情報

セクション内容
3.2.P.1一般情報(製剤の名称、性状、組成など)
3.2.P.2開発薬事(処方設計、試験法選定理由、QbDなど)
3.2.P.3製造方法(製造工程、工程管理、フローチャート)
3.2.P.4製剤原料の管理(賦形剤、添加剤の品質管理)
3.2.P.5管理規格(完成品の試験項目・方法・規格)
3.2.P.6容器・包装(最終製品の容器、材料、適合性など)
3.2.P.7安定性(長期保存・加速試験データ、有効期限)

📁 3.3 参考資料(Literature References)

  • 上記の項目に引用した学術文献や資料など

🧭 構成図(簡易)

lessコピーする編集するModule 3: Quality
├── 3.1 目次
├── 3.2.S 原薬情報
│   ├── S.1 一般情報
│   ├── S.2 製造方法
│   ├── S.3 特性
│   ├── S.4 管理規格
│   ├── S.5 バッチ試験
│   ├── S.6 容器
│   └── S.7 安定性
├── 3.2.P 製剤情報
│   ├── P.1 一般情報
│   ├── P.2 開発薬事
│   ├── P.3 製造
│   ├── P.4 原料管理
│   ├── P.5 規格
│   ├── P.6 容器
│   └── P.7 安定性
└── 3.3 文献等

📌 Module 3のポイント

  • 提出量が最も多くなるモジュール(大量のデータを含む)
  • 品質試験のロジックと一貫性が重視される(例:規格設定の妥当性)
  • バイオ医薬品の場合はQ5シリーズのガイドラインと密接に連携

🔹 CTD Module 4 の全体構成

Module 4は以下のように構成されます:

sqlコピーする編集するModule 4: Nonclinical Study Reports
├── 4.1 目次(Table of Contents)
├── 4.2 薬理試験報告(Pharmacology)
├── 4.3 薬物動態報告(Pharmacokinetics)
└── 4.4 毒性試験報告(Toxicology)

📁 4.1 目次(Table of Contents)

  • Module 4 全体の構成と各試験報告の一覧
  • 電子CTDでは自動生成されることもあります

📁 4.2 薬理試験報告(Pharmacology)

セクション内容
4.2.1一次薬理作用(主作用)に関する試験
4.2.2二次薬理作用(付随作用)に関する試験
4.2.3安全性薬理試験(心臓、中枢神経、呼吸など)
4.2.4薬理学的相互作用(必要に応じて)

📁 4.3 薬物動態試験報告(Pharmacokinetics)

セクション内容
4.3.1吸収(Absorption)試験
4.3.2分布(Distribution)試験
4.3.3代謝(Metabolism)試験
4.3.4排泄(Excretion)試験
4.3.5薬物相互作用(非臨床PKでのDDI)
4.3.6その他(例:タンパク結合、血液脳関門透過性など)

📁 4.4 毒性試験報告(Toxicology)

セクション内容
4.4.1単回投与毒性試験(急性毒性)
4.4.2反復投与毒性試験(サブアキュート・サブクロニック)
4.4.3生殖発生毒性試験(DART)
4.4.4局所刺激性・感作性試験
4.4.5遺伝毒性試験(Ames試験、染色体異常など)
4.4.6発がん性試験(長期毒性)
4.4.7毒性薬物動態(Toxicokinetics)
4.4.8その他(免疫毒性、光毒性、小児毒性など)

🧭 構成図(簡略イメージ)

sqlコピーする編集するModule 4: Nonclinical Study Reports
├── 4.1 Table of Contents
├── 4.2 Pharmacology
│   ├── 4.2.1 Primary
│   ├── 4.2.2 Secondary
│   └── 4.2.3 Safety
├── 4.3 Pharmacokinetics
│   ├── 4.3.1 Absorption
│   ├── 4.3.2 Distribution
│   ├── 4.3.3 Metabolism
│   └── 4.3.4 Excretion
└── 4.4 Toxicology
    ├── 4.4.1 Acute
    ├── 4.4.2 Repeat dose
    ├── 4.4.3 Reproductive
    ├── 4.4.5 Genotoxicity
    └── 4.4.6 Carcinogenicity

📌 Module 4のポイント

  • 実際の**試験報告書(Study Reports)**を収載するモジュール
  • 試験はGLP準拠で実施されている必要がある(日本では厚労省指針対応)
  • Module 2(サマリー)と内容が対応している必要あり(例:2.6と4)

Module 5の構成

CTDのModule 5は、**臨床試験データ(Clinical Study Reports)**に関する情報をまとめるパートであり、医薬品の有効性と安全性の科学的根拠を示す最も重要なモジュールの一つです。


🔹 CTD Module 5 の全体構成

Module 5は、以下のように整理されています:

sqlコピーする編集するModule 5: Clinical Study Reports
├── 5.1 目次(Table of Contents)
├── 5.2 特別な種類の臨床報告書
├── 5.3 個別の臨床試験報告書
├── 5.4 他の臨床情報(文献など)
├── 5.5 臨床試験の一覧表(目録)

📁 5.1 目次(Table of Contents)

  • Module 5 全体の構成を示す目次(セクションと文書タイトル)

📁 5.2 特別な種類の臨床報告書(Special Clinical Reports)

サブセクション内容(例)
5.2.1ヒト薬物動態に関する報告書(例:相互作用、代謝プロファイル)
5.2.2先行使用経験(例:治験外使用、同種薬の臨床経験)
5.2.3コンパッショネート使用、同種薬の実地使用データなど(任意)

📁 5.3 個別の臨床試験報告書(Clinical Study Reports)

このセクションが最も重要で、以下のように分類されます:

サブセクション内容
5.3.1生物薬剤学試験・関連試験
(BA/BE試験、食事影響試験、溶出性試験)
5.3.2臨床薬理試験(フェーズ1)
(薬物動態、薬力学、初期安全性)
5.3.3治療的確認試験(フェーズ2・3)
主要な有効性・安全性試験報告
5.3.4長期使用試験、安全性延長試験など
追加的なエビデンス提供
5.3.5探索的臨床試験(フェーズ0〜1)
予備的な試験データ(任意)

📁 5.4 他の臨床情報(Literature, Reports)

  • 発表済み文献、他社データ、公開情報など
  • 引用文献のPDFなども含む

📁 5.5 臨床試験の一覧(Tabular Listing)

  • Module 5 に含まれるすべての臨床試験を表形式で一覧化
    • 試験番号、対象集団、デザイン、主要評価項目など

🧭 モジュール構成図(簡略)

sqlコピーする編集するModule 5: Clinical Study Reports
├── 5.1 目次
├── 5.2 特殊臨床データ
├── 5.3 試験報告書
│   ├── 5.3.1 BA/BE試験
│   ├── 5.3.2 臨床薬理(P1)
│   ├── 5.3.3 有効性確認(P2・P3)
│   ├── 5.3.4 長期使用・拡張試験
│   └── 5.3.5 探索的試験
├── 5.4 文献・他の資料
└── 5.5 試験一覧表

📌 Module 5のポイント

  • 提出データ量が非常に多くなるモジュール
  • 多くの報告書が**ICH E3(臨床試験報告書構成)**に準拠して作成される必要あり
  • Module 2.7(臨床サマリー)と一貫性がとれていることが重要
  • 原則、GCP準拠試験である必要あり(PMDAやFDAで査察対象となる)

🔍 よくある資料の例

  • 治験報告書(CSR)
  • BE試験報告書(Q8対応)
  • PK試験報告書(集団PK含む)
  • 安全性統合報告(ISS)
  • 有効性統合報告(ISE)

✅ ① CSR(Clinical Study Report)テンプレート概要

(ICH E3ガイドライン準拠)

markdownコピーする編集する1. タイトルページ  
2. 概要(Synopsis)  
3. 目次(Table of Contents)  
4. 倫理的配慮  
5. 研究目的  
6. 試験の設計  
7. 対象被験者の選択(インクルージョン/エクスクルージョン)  
8. 治療の詳細(用量、スケジュール)  
9. 有効性評価の方法と結果  
10. 安全性評価の方法と結果  
11. 統計的手法と解析結果  
12. 試験中止・逸脱・欠測の説明  
13. 結論と解釈  
14. 付録(例:CRF、試験薬ロット情報、検査所一覧など)

📝 補足:

  • 英語で作成するのが一般的(日本語版をPMDAに添付する場合あり)
  • 試験ごとに一冊ずつ作成されます

✅ ② Module 5 作成時の注意点一覧

ポイント説明
1. 試験の分類を正しく行うことフェーズ分類(1, 2, 3)や試験目的(BA/BE、安全性拡張など)に基づいて適切なセクション(5.3.x)へ配置
2. CSRはICH E3準拠で記載一貫した構成で審査官の読みやすさを確保
3. 各試験の概要はModule 2.7と整合させることデータの整合性が重要視されます(例:試験結果が一致しているか)
4. タイトルページに試験番号・日付を明記トレーサビリティ確保のために統一フォーマットを徹底
5. 付録を別ファイルとして提出する場合は参照リンクを明記eCTD形式ではファイル間リンクが審査効率に関与します
6. 文献(5.4)とCSR(5.3)の重複に注意重複資料を避け、資料の位置づけを明確に

✅ ③ 臨床試験リスト(5.5)作成例

試験番号試験名フェーズデザイン被験者数主評価項目CSRファイル名
ABC-101第1相 単回投与PK試験Phase 1無作為化、単盲検40人Cmax, AUC5.3.2_ABC-101.pdf
ABC-202第2相 有効性探索試験Phase 2無作為化、プラセボ対照80人減少率(%)5.3.3_ABC-202.pdf
ABC-301第3相 確認試験Phase 3無作為化、二重盲検400人寛解率、安全性5.3.3_ABC-301.pdf
ABC-BE1生物学的同等性試験BA/BEクロスオーバー24人Tmax, AUC, Cmax5.3.1_ABC-BE1.pdf

📝 補足:

  • ExcelやWordで一覧を作成することが多く、eCTDでは5.5フォルダに格納
  • 一覧には試験の意義やファイル名も含めるとわかりやすいです

編集履歴

2025/05/06 Mrはりきり