間葉系幹細胞由来エクソソーム療法 [2025/04/18]

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間葉系幹細胞由来エクソソーム療法

間葉系幹細胞(MSC: Mesenchymal Stem Cells)由来エクソソーム療法は、近年注目されている細胞を用いない(cell-free)次世代再生医療・細胞治療戦略のひとつです。間葉系幹細胞が分泌する「エクソソーム(exosome)」の持つ再生促進、抗炎症、免疫調整、抗線維化などの効果を利用します。

以下に、科学的背景・作用機序・応用例・利点と課題を整理して解説します。


🔷 1. 間葉系幹細胞(MSC)とは?

  • 骨髄、脂肪、臍帯、歯髄などに由来し、自己複製能と多分化能を有する成人幹細胞
  • 組織修復や免疫調節作用があるため、従来は細胞移植として再生医療で利用されてきた。

🔷 2. エクソソームとは?

項目内容
定義細胞から分泌される直径30〜150 nmの膜小胞(extracellular vesicle)
起源エンドソーム系に由来し、多くの細胞で分泌される
含有物miRNA、mRNA、タンパク質、脂質、細胞表面分子など
作用標的細胞への情報伝達、機能調整(パラクリン効果)

🔷 3. MSC由来エクソソームの治療的特徴

効果機序の概要
再生促進miRNAや成長因子を含み、組織修復・血管新生を誘導
抗炎症TNF-α抑制、IL-10促進などにより免疫応答を調整
抗線維化線維芽細胞の活性抑制、TGF-β経路の調節
免疫調整樹状細胞、T細胞、マクロファージの活性を制御

🔷 4. MSCエクソソーム療法の利点

利点内容
細胞移植に比べて安全性が高い拒絶反応、腫瘍化、塞栓などのリスクが低い
保存性が良い凍結保存・ロットごとの安定供給が可能
調製・標準化が比較的容易細胞よりも均一性の高い製剤化が可能
薬剤的利用がしやすい静脈注射や局所投与が可能(非侵襲的)

🔷 5. 応用分野(臨床・前臨床例)

疾患領域試験段階または用途例
中枢神経疾患脳梗塞後の神経再生、脊髄損傷、アルツハイマー病モデル
肺疾患COVID-19関連ARDS、肺線維症
皮膚再生糖尿病性潰瘍、熱傷、創傷治癒促進
肝疾患肝線維化、NASHモデルにおける肝再生
免疫疾患関節リウマチ、自己免疫性疾患
眼科領域角膜損傷や網膜変性への再生効果

🔷 6. 製造・品質管理の課題

項目課題点
製造MSCのドナー差、培養条件(2D vs 3D培養)、スケールアップの最適化
分離・精製超遠心、サイズ排除クロマトグラフィーなどによる高純度化が必要
定量評価内容物(miRNA, タンパク質)や粒子数の規格化が困難
メカニズム含有miRNAなどの有効成分・ターゲットの特定が未完了
規制対応医薬品としての規格・申請基準が整備途上(再生医療等製品 or 生物由来製品)

🔷 7. 現在の開発動向(例)

企業名製品名(またはプログラム)対象疾患開発段階(年)
Exopharm(豪)Plexaris™創傷治癒(皮膚潰瘍)Phase 1開始(2019年)
Kimera Labs(米)MSCエクソソーム製剤(研究用・臨床用)COVID-19後遺症、炎症性疾患FDA IND承認、Phase 1/2a開始(2023年5月)
RION(米)Purified Exosome Product™(PEP™)糖尿病性足潰瘍、変形性膝関節症Phase 2(DFU)完了(2025年1月)
Phase 1b(膝OA)開始(2024年9月)
Direct Biologics(米)ExoFlo™ARDS(急性呼吸窮迫症候群)、COVID-19関連ARDSPhase 3(EXTINGUISH試験)進行中(2023年時点)
JCRファーマ(日本)MSC由来製品(詳細非公開)CNS疾患向け遺伝子治療のDDS開発Modalis社と共同研究開始(2023年12月)

📝 補足ポイント

  • ExopharmのPlexaris™は、血小板由来エクソソームを用いた創傷治癒の臨床試験で、2019年にPhase 1を開始しました。
  • Kimera Labsは、COVID-19後遺症を対象としたMSCエクソソーム製剤の臨床試験を2023年5月に開始しました。
  • RIONは、糖尿病性足潰瘍に対するPEP™のPhase 2試験を2025年1月に完了し、変形性膝関節症に対するPhase 1b試験を2024年9月に開始しました。
  • Direct BiologicsのExoFlo™は、ARDSを対象としたPhase 3試験(EXTINGUISH試験)を2023年時点で進行中です。
  • JCRファーマは、Modalis Therapeuticsと共同で、CNS疾患向けの遺伝子治療用DDS開発を2023年12月に開始しました。

🔷 8. 今後の展望

  • 標準化技術(GMP準拠製造)の確立
  • 薬理作用メカニズムの解明とmiRNAターゲティング
  • DDS技術(標的指向型エクソソーム)の開発
  • 細胞治療との併用や補完的使用

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2025/05/18 Mrはりきり

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