はじめに
医薬品の製造・品質保証において、委託先(CDMO)との間で取り交わす「品質取り決め書(Quality Agreement)」は、GxPに基づく法令遵守と製品の信頼性確保において極めて重要な役割を果たします。特に、製造委託が国内外にまたがる現代の医薬品開発・供給体制においては、日本と欧米の取り決め書の様式や運用上の違い、開発ステージごとの記載項目の変化を理解し、適切な契約管理を行うことが求められます。本記事では、日本における品質契約書の一般様式とその記載内容を解説し、米国FDAや欧州EMAにおけるQuality Agreementの構成とも比較しました。また、CDMOが独自技術を有する場合の技術使用料(ライセンスフィー)に関する契約的な取扱いについても整理しています。
取決め書とその役割
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ChatGPT: GxP(Good x Practice)において「医薬品の品質」に関わる取り決め書は、製造から供給、販売後に至るまでの品質保証体制を文書化したものであり、日本および欧米(米国FDA・欧州EMA)では、それぞれ法令や規制に基づいた文書が定められています。以下に、代表的な取り決め書の名称とその役割、日米欧での対比を整理します。
🔹 日本における主な取り決め書とその役割
名称 | 役割・目的 | 根拠・関連法令 |
---|---|---|
品質契約書(品質取り決め書) | 製造委託や試験委託において、品質に関する責任範囲や管理方法を明文化する契約書。 | GQP省令 第12条、GMP省令 第9条、医薬品医療機器等法(薬機法) |
製造販売業者-製造業者間の品質取り決め書 | 製造販売業者がGQP体制で製造業者を適切に管理するための根拠文書。製造業者がGMPを遵守していることの確認も含む。 | GQP省令、GMP省令 |
逸脱・変更・回収等の連絡体制に関する取り決め書 | 両者の間で逸脱・変更・回収時の情報共有・報告体制を整備する。 | PMDA査察でも確認事項となる実務的な要素。 |
🔹 米国(FDA)における主な取り決め書とその役割
名称 | 役割・目的 | 根拠・関連ガイドライン |
---|---|---|
Quality Agreement | 製造委託先(Contract Manufacturer)との間で、品質責任・管理・逸脱対応等を明確に定めた契約書。 | FDA Guidance for Industry: Contract Manufacturing Arrangements for Drugs: Quality Agreements (2016) |
Technical Agreement(Quality Agreementの一部) | 技術的な取り決めを中心に記載し、製造・試験・記録管理の分担を明確に。 | 上記FDAガイダンスに内包される用語。 |
🔹 欧州(EMA/EU-GMP)における主な取り決め書とその役割
名称 | 役割・目的 | 根拠・関連文書 |
---|---|---|
Technical Agreement または Quality/Technical Agreement | 製造・試験等のGMP活動を委託する場合に、委託者と受託者の責任・手順を明確化した文書。 | EU-GMP Annex 16(Certification by a Qualified Person)および Chapter 7(Outsourced Activities) |
Pharmacovigilance Agreement(市販後) | 安全性情報の収集・評価・報告に関する取り決め。販売後活動で重要。 | EMA GVP Module I(Pharmacovigilance systems)等 |
🔹 日米欧の比較まとめ
比較項目 | 日本 | 米国 | 欧州 |
---|---|---|---|
主な名称 | 品質取り決め書、品質契約書 | Quality Agreement | Technical/Quality Agreement |
法的義務性 | GQP/GMP省令により明文化 | Guidance(指針)だが実質的義務 | EU-GMPガイドラインに準拠(実質的義務) |
当局の要求 | PMDAが査察時に確認 | FDA査察で重要視される | EMA査察でAnnex 16で確認対象 |
対象範囲 | 製造・試験委託、品質情報管理、逸脱・変更対応 | 製造・試験・逸脱・回収の責任と手順 | 同上、QPによるバッチ認証責任も強調される |
🔸補足:取り決め書が果たす役割
- 委託者と受託者の法的・品質的責任分担の明確化
- 不適合時の対応、回収、逸脱報告などリスクの事前共有
- 査察時に信頼性保証の証拠文書として活用される
- 国際共同治験や多国間製造スキームにおいて、コンプライアンス確保の鍵となる
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記載すべき基本構成
Q: 取り決め書に記載すべき項目について,開発ステージごとの違いや日本および欧米での違いについて解説して
ChatGPT: GxP領域における**品質取り決め書(Quality Agreement / Technical Agreement)**は、製品の開発・製造・販売の各ステージに応じて、記載すべき項目が変化します。また、日本と欧米(特にFDA, EMA)ではその記載要求や監査観点にも若干の違いがあります。以下に、ステージ別および地域別の違いを体系的に解説します。
1. 記載すべき基本構成(共通項目)
開発段階を問わず、品質取り決め書には以下のような項目が基本的に含まれます:
セクション | 主な記載内容 |
---|---|
1. 契約当事者の情報 | 契約者/受託者の名称、責任者、連絡先など |
2. 定義と略語 | 用語の定義(逸脱、変更、OOS、製造ロットなど) |
3. 適用範囲 | 対象製品、業務範囲(製造、試験、包装、出荷など) |
4. GMP/GQP遵守 | 適用されるGxP、準拠すべき規制 |
5. 品質責任の分担 | 逸脱・変更・回収・OOS/OOT対応などの責任者 |
6. 文書管理・記録保持 | バッチ記録、分析記録、記録保存期間 |
7. 監査・査察対応 | 実施頻度、立入調査の連絡と報告義務 |
8. 変更管理 | 製造工程、原材料、分析法などの変更通知義務 |
9. 教育訓練 | 人員のGMP教育・訓練に関する規定 |
10. 回収・苦情処理 | 回収連絡体制、苦情対応のフロー |
11. 製品リリース | バッチリリース判定責任(特に欧州ではQPの記載が必要) |
12. 契約の改定・終了 | 契約更新、終了条件、移管時の措置 |
2. 【ステージ別】記載内容の違い
ステージ | 特徴 | 記載の重点 |
---|---|---|
開発初期(治験薬段階) | スケールアップ前、変更が頻繁 | – サンプル管理 – 技術移管の柔軟性 – 規制対応の範囲(GMP適用除外項目など) – バリデーション要否の明示 |
治験中盤〜後期(Phase 2/3) | 本製造に近い工程に | – 実工程に近い品質仕様の設定 – 出荷判定責任の明示 – データインテグリティ、逸脱対応などの明文化 |
商用段階(NDA/BLA後) | 製品化/販売後 | – 本格的な逸脱・変更・回収体制 – 安定性モニタリング責任 – 規制当局との連携義務(再審査・再評価含む) |
3. 【地域別】日本/米国/欧州の違い
項目 | 日本 | 米国(FDA) | 欧州(EMA) |
---|---|---|---|
法的根拠 | GQP省令、GMP省令で明文化 | 法規ではなくGuidance(実質的義務) | EU-GMP Chapter 7, Annex 16などで明文化 |
記載の必須性 | 明文化されており取り決め書作成が義務 | 契約内容の文書化が強く推奨(査察で指摘) | QP認証に直結するため必須 |
リリース責任 | 製造販売業者(GQP) | Marketing Authorization Holder (MAH) | QP(Qualified Person)が製品毎に責任を持つ |
市販後の範囲 | GVPに別契約書(PV契約書)で対応 | Quality Agreementに統合されることが多い | PV Agreementを別途締結する傾向がある |
査察観点 | PMDAが文書管理と連携体制の明記を重視 | FDAがデータインテグリティや逸脱対応を重点査察 | EMAはQPとの役割分担と契約履行証拠に注目 |
4. 特記事項(監査指摘されやすい点)
- 「曖昧な責任分担」:逸脱、OOS、バリデーション実施の主体が不明確な記載
- 「更新されていない契約」:製造工程変更後も契約が旧バージョンのまま
- 「署名・日付の欠如」:実効性を持たない契約とみなされる
- 「市販後の回収責任不明」:GVP連携が欠如しているケース
まとめ
観点 | 初期段階 | 商用段階 | 日本 | 米国 | 欧州 |
---|---|---|---|---|---|
記載項目の詳細さ | 低(柔軟性重視) | 高(実運用ベース) | 必須(省令) | 指針に基づく | QP管理により厳格 |
契約更新頻度 | 高 | 安定(変更時) | GQPの監督下で管理 | 製造委託で査察対象 | Annex 16上で必要 |
記載強度 | 概略的 | 詳細に責任明記 | 逸脱・回収・出荷明記 | データ責任重視 | QP承認フロー含む |
必要であれば、**テンプレート(日本語・英語対応)**も提供できます。
日本における品質取り決め書(品質契約書)の様式(例)
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ChatGPT: 日本および欧米における「品質取り決め書(Quality Agreement / Technical Agreement)」は、文書形式に法的な様式指定はないものの、当局査察において「求められる記載項目や構成」はほぼ標準化されています。以下に、日本と欧米それぞれの一般的な様式とその解説を示します。
名称例:品質契約書(製造販売業者―製造業者)
【構成例】
セクション | 記載内容の要点 |
---|---|
1. 目的 | 両者間の品質保証に関する責任分担と管理方法を明文化する目的 |
2. 契約当事者の情報 | 社名・所在地・責任者・連絡先等 |
3. 用語の定義 | OOS、逸脱、変更など本書で使用する用語の定義 |
4. 対象製品 | 対象となる製品名・規格・製品コード等 |
5. 契約の適用範囲 | 製造・試験・包装・保管・出荷等の対象業務範囲 |
6. 品質保証体制 | GMP適合性、品質保証責任者の配置、教育訓練など |
7. 原材料・資材の取り扱い | 供給、受入試験、試験規格、管理方法 |
8. 製造・包装 | 製造指図書の発行、作業記録、設備の衛生管理 |
9. 試験・検査 | 製品試験、安定性試験、試験機器の管理責任 |
10. 出荷判定 | 出荷可否判定責任者、製造販売業者の最終判断 |
11. 変更管理 | 変更の分類(軽微/重要)と事前承認・通知義務 |
12. 逸脱・OOS | 発生時の連絡体制、調査責任、報告期限 |
13. 回収対応 | 回収のトリガー条件、役割分担、報告手順 |
14. 査察対応 | PMDA・都道府県の査察時の協力義務 |
15. 教育訓練 | 委託者/受託者の責任範囲と実施頻度 |
16. 文書管理 | 作業記録、保存期間、電子記録の管理基準 |
17. 有効期間と見直し | 有効期限、定期的見直し、改訂履歴の保持 |
18. 契約解除と終了措置 | 通知期間、解除後のデータ移管等 |
19. 署名欄 | 契約者・受託者の署名と日付 |
日本の様式の特徴(解説)
- GQP省令/GMP省令に基づく実務要件が明確に反映される。
- 出荷判定は製造販売業者が責任を持つことが明記される。
- 医薬品医療機器等法に準拠し、都道府県査察やPMDA適合性調査の対象となる。
- 契約文面は日本語で作成され、海外受託先には英訳版を別途用意することが多い。
欧米(FDA/EMA)におけるQuality Agreementの様式(例)
名称例:Quality Agreement for Contract Manufacturing / Testing
【構成例】
セクション | 記載内容の要点 |
---|---|
1. Introduction | 契約の背景、法令遵守の確認(21 CFR Part 210/211、EU-GMPなど) |
2. Scope of Agreement | 委託内容、対象製品、業務範囲(製造/試験/包装) |
3. Roles and Responsibilities | 委託者(Sponsor/MAH)と受託者(CMO/CDMO)の責任分担 |
4. GMP Compliance | 適用されるGMP要件、査察対応、教育訓練の義務 |
5. Quality Control | 試験計画、分析手順、試験結果の報告方法 |
6. Documentation | バッチ記録、逸脱記録、変更記録、保存年限 |
7. Change Control | 製造方法・試験法等の変更と通知義務 |
8. Deviations and OOS | 逸脱処理、OOS調査、Root Cause分析の責任者と期限 |
9. Product Release | 出荷判定、QP認証(欧州)、MAHによる最終判断 |
10. Complaint Handling | 苦情調査と報告、医薬品安全性情報とのリンク |
11. Recalls | 回収体制、対象ロット、保健当局通知の責任 |
12. Audits | 委託者による定期監査、CAPA対応 |
13. Confidentiality | 守秘義務、データ保護規定(例:GDPR) |
14. Term and Termination | 有効期間、終了後のデータ保持と移管 |
15. Signatures | 双方の責任者による署名・日付(通常は英文署名) |
欧米の様式の特徴(解説)
- 米国では「Guidanceベース(2016年発行)」であり、文書形式は自由だが実務ではテンプレート化されている。
- 欧州ではQP(Qualified Person)によるバッチ認証に直結するため、取り決め書は厳格。
- 欧州ではAnnex 16やChapter 7に対応する記載が求められる。
- 多くが英語で作成され、国際契約文書として法務部と連携して精査される。
- FDA査察ではData Integrity(DI)記載の有無が重視される傾向。
日本と欧米の様式の比較表
項目 | 日本様式 | 欧米様式 |
---|---|---|
言語 | 日本語(英訳併記可) | 英語 |
契約名称 | 品質契約書/品質取り決め書 | Quality Agreement / Technical Agreement |
法的根拠 | GQP省令、GMP省令 | FDA Guidance, EU-GMP Annex 16 |
出荷判定責任 | 製造販売業者(MAH) | MAHまたはQP(欧州) |
記録の保存期間 | GQP省令に準拠(通常5年〜10年) | ICH Q7/Q10等に従う(地域により異なる) |
当局要求の明記 | PMDA、都道府県 | FDA、EMA、MHRA等 |
規定される頻度 | 変更時または1〜3年毎に更新 | GMP関連変更時に都度更新が一般的 |
技術使用料
1. 技術使用料(フィー)の取り決めはどの契約書に記載されるか?
Q: 委託先(CDMO)が持つ独自の技術を使用している場合に,取り決め書には技術使用料(フィー)について記載されることになるのか,それとも他の契約書で取決めするのか.
ChatGPT: 非常に重要なご質問です。
委託先(CDMO)が保有する独自技術(プロプライエタリ技術、特許、ノウハウ等)を使用する場合、技術使用料(Technology Fee, License Fee)に関する取り決めは、品質取り決め書(Quality Agreement)には通常記載されません。この点は品質契約と商業契約を明確に区別することが、GxPコンプライアンス上も契約実務上も極めて重要です。
契約の種類 | 記載される内容 | 技術使用料の記載有無 |
---|---|---|
品質契約(Quality Agreement) | GMP/GQP遵守、品質保証体制、逸脱管理など | ❌(原則含まれない) |
製造委託契約(Manufacturing Services Agreement, MSA) | 製造業務の対価、スケジュール、支払い条件など | ✅(必要に応じて含む) |
技術ライセンス契約(Technology License Agreement) | 特許、ノウハウ、専用技術の使用条件・対価 | ✅(中心となる契約) |
秘密保持契約(CDA/NDA) | 技術内容の漏洩防止、情報の取扱い条件 | ❌(金銭条件は基本的に含まず) |
2. CDMOの独自技術使用時の契約構成イメージ
以下のような契約体系で整理されるのが一般的です:
┌───────────┐
│ 基本契約(MSA) │ ←業務範囲・支払条件
└───────────┘
│
├──
─────
───┬───────
───┐
│ │ │
▼ ▼ ▼
技術ライセンス契約 品質取り決め書(QA) 秘密保持契約(CDA)
(技術使用・特許権) (GMP対応・品質体制) 技術情報の機密保持)
- 技術料(例:プロセス最適化技術、特殊クロマト法、独自細胞株など)の使用料やロイヤリティは、ライセンス契約またはMSAに明記
- 品質取り決め書は、「技術の使用」自体には触れず、技術に基づく製造や試験の **「品質保証責任分担」**を規定するのみ
3. 技術使用料に関わる記載内容(ライセンス契約等)
記載項目 | 内容例 |
---|---|
使用対象技術 | プロセスA、製剤設計B、分析法C等 |
使用権の範囲 | 非独占的/地域限定/目的限定 |
使用料(ライセンスフィー) | 一時金(upfront)、マイルストーン、ロイヤルティなど |
秘密保持 | 第三者開示禁止、逆開発禁止条項 |
知的財産権の帰属 | 改良発明の権利帰属先など |
使用期間 | 製造期間に限定/製品ライフサイクル全体など |
技術移転の制限 | 他社への再使用の可否など |
4. 例外的に品質契約に技術関連の記載があるケース
- 技術に基づく製造方法の再現性保証(例:特定装置によるパラメータ管理)に関して、 「XX技術による製造工程においては、XX社の標準操作手順(SOP-12345)に従い実施する」
- ただしこのような記述も**「品質管理上の責任分担」として書かれる**もので、使用料等は含まれません。
結論
質問項目 | 回答 |
---|---|
CDMOが持つ独自技術の使用時、品質取り決め書に技術使用料の記載はあるか? | ❌ 記載されない(通常) |
技術使用料に関する契約書は? | ✅ 製造委託契約またはライセンス契約 |
品質取り決め書での技術記載の範囲は? | 技術に関連する品質管理や製造責任の範囲の明記まで |
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参考
Copilotでの初期調査の内容
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編集履歴
2025/04/30 Mrはりきり