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rAAV
recombinant AAV (Adeno Associated Virus)は, 一般的に天然に存在しているAAVを使用して遺伝子組換えされたものをいう.
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、単独では複製できず、アデノウイルス(AV)などが提供する「ヘルパー因子(helper functions)」を必要とする依存ウイルスです。従来、AAVの複製にはE1A、E1B、E2A、E4orf6、VA RNA I など、複数のAV遺伝子産物が必要とされてきた。しかし近年、これらすべてが必須ではないことが明らかとなり、E2A、VA RNA I、L4-22K の3つの因子だけでも、従来のヘルパープラスミドと同等のAAV生産が可能であるとする報告がなされた。これにより、製造工程の簡素化と安全性向上が期待され、今後の商用rAAVベクター製造における新たな標準となる可能性がある。なお、これらのヘルパー因子はAAVベクターには含まれず 、製造時に一時的にplasmideとして細胞へ導入されるため、患者への投与時の安全性の問題は非常に低いと考えられる。
AAVとアデノウイルス(AV)の関係
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ChatGPT: アデノ随伴ウイルス(AAV:Adeno-Associated Virus )が「アデノウイルス(AV)」の共感染下で増殖できる という現象は、AAVが「デファイシエント(欠損)ウイルス 」であることに起因しています。以下に、**AAVがアデノウイルスの助けを借りて増殖する仕組み(分子機序)**を詳しく説明します。
AAVは「依存ウイルス(dependovirus)」
AAVは単独では細胞内で**増殖(複製・構造タンパク質の発現)**できません。
他のウイルス(特にアデノウイルスや単純ヘルペスウイルスなど)の感染によって、**補助因子(helper functions)**が供給されたときにのみ増殖が可能です。
AAVのライフサイクル(補助ウイルスなしとありの違い)
条件 AAVの挙動 単独感染 宿主ゲノムに統合されて潜伏 (latent infection) AVなどとの共感染 AVから補助因子を受け取り、増殖サイクルを開始
アデノウイルスが提供する補助因子(helper functions)
アデノウイルスの以下の遺伝子産物が、AAV複製の鍵となる:
アデノウイルス遺伝子 AAVに提供する機能 E1A 宿主細胞の細胞周期を調整し、AAV遺伝子発現を促進(特にRep) E1B 細胞のアポトーシスを抑制し、複製環境を安定化 E2A AAVのDNA複製を促進(シングルストランドDNAからダブルストランドへ) E4 orf6 DNA修復や複製関連タンパク質の安定化 VA RNA 宿主の抗ウイルス反応(PKR経路)を抑制して、翻訳を効率化
AAVの複製の流れ(AVの補助下)
共感染
AVによる細胞環境のリプログラミング
AAVのRep遺伝子発現
AVのE1AなどがAAVのP5プロモーター活性化 → Repタンパク質(Rep78/68など)合成
AAVゲノムの複製
RepがI-TR(inverted terminal repeat)を認識して自己ゲノム複製開始
AVのE2A・E4・VA RNAが複製と翻訳を支援
AAV構造タンパク質(Cap)の発現と粒子形成
Capタンパク質合成 → 核内で新たなAAVウイルス粒子が形成
放出
AAVは細胞がAVにより破壊されるタイミングで細胞外へ放出
まとめ(要点)
AAVは自己増殖できない「依存ウイルス 」であり、AVのような補助ウイルスがないと複製できません。
AVは、AAVの複製・発現・粒子形成に必要な細胞内環境とタンパク質を供給 します。
この関係性を応用して、**AAVベクターの製造(遺伝子治療など)**では人工的にAV由来の遺伝子を細胞に導入して、AAVを大量生産しています。
ヘルパープラスミド系(Triple Transfection法)とは?
Triple Transfection法 は、AAVベクターの製造において最も一般的に用いられている一過性発現法 で、3種類のプラスミドDNAを同時に宿主細胞(通常HEK293細胞)に導入 してAAV粒子を生産する方法です。
使用する3種類のプラスミド
プラスミド種別 内容 主な役割 1. AAVベクタープラスミド ITR配列に挟まれた目的遺伝子(GOI) 治療用遺伝子を運ぶ本体 2. Rep/Capプラスミド AAV由来のRep遺伝子(複製因子)とCap遺伝子(構造タンパク質) AAV粒子の自己複製と殻の形成 3. ヘルパープラスミド アデノウイルス由来のヘルパー因子(例:E2A、VA RNA I、L4-22Kなど) 細胞環境をウイルス複製に適した状態にする
※ 従来は E1A、E1B、E2A、E4orf6、VA RNA I が用いられていたが、最近では最小セット(E2A、VA RNA I、L4-22K)の研究も進んでいます。
手順(簡略化)
HEK293細胞などに3種類のプラスミドを同時にトランスフェクション (例:PEI法、リポフェクション)
細胞内で:
RepがITRを認識してAAVゲノム複製
Capによりウイルス粒子のカプシド形成
ヘルパープラスミド由来因子が複製・発現を促進
数日後、細胞からAAV粒子を回収・精製
特徴・利点
ウイルスフリー製造法 :AVやHSVなどのウイルス感染が不要
GMPスケールにも対応可能
柔軟な遺伝子置換が可能(異なるGOIで同じ製造系が使える)
注意点・課題
一過性発現なので一度限りの生産
トランスフェクション効率やスケーラビリティに限界あり
プラスミド残存DNAの除去が品質管理上の課題
応用と展望
セルバンク不要な迅速生産 が可能なため、研究から初期臨床試験用製造まで広く活用
Stable Producer Cell Line法 との比較では柔軟性とスピードに優れる
近年は3プラスミドを統合した「2プラスミド法」や、最小限ヘルパーセットの最適化 も進行中
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細胞周期(Cell Cycle)の4つの主なフェーズ
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ChatGPT: はい、細胞の増殖サイクル(Cell Cycle)は、細胞分裂に至る一連の段階 で構成されています。特に**S期(DNA合成期)**は、ウイルス(例:AAV)複製の場として重要視されるため、以下に全体像を含めて詳しく解説します。
フェーズ 名称 主な内容 G1期 Gap 1期(第一ギャップ期) 細胞が成長し、タンパク質合成や代謝が活発になる。DNA複製の準備 S期 Synthesis期(合成期) DNAが複製される(2倍になる)重要な時期 。染色体のコピーが作られるG2期 Gap 2期(第二ギャップ期) DNA複製後のチェック、修復、分裂準備。細胞内構造も複製される M期 Mitosis期(有糸分裂期) 染色体が2つの娘細胞へ分配され、細胞分裂が完了
また、細胞が分裂をしない場合は「G0期」という静止期 に入ります。
各フェーズの詳細
G1期(成長期)
細胞サイズの増大
栄養素の取り込み
RNAやタンパク質の合成
S期へ進むか、静止(G0)するかの判断が行われる
S期(DNA合成期)← ウイルス複製に重要!
各染色体が正確に複製 され、二倍量のDNA が得られる
AAVなど一部ウイルスは、この時期の細胞環境を模倣・活用して自らのDNA複製を行う
ヌクレオチド合成やDNAポリメラーゼ活性 が活性化している
G2期(分裂準備期)
複製されたDNAの修復・確認
細胞質の準備(ミトコンドリア、ゴルジ体などの複製)
有糸分裂のための構造(紡錘体など)の形成開始
M期(有糸分裂期)
前期→中期→後期→終期(prophase→metaphase→anaphase→telophase)
染色体が分配され、細胞が2つの娘細胞に分裂
G0期(静止期)
分裂を行わず、機能に特化した休止状態
神経細胞や筋細胞などはこの状態に長期間とどまる
ウイルスとS期の関係
多くのウイルス(AAV、HPVなど)は、自分の複製のために宿主細胞をS期へ誘導 します。
AAVは単独ではS期を誘導できないため、アデノウイルスなどの補助ウイルスがその役割を果たします(E1AなどがG1→Sの移行を促進)。
補足:細胞周期の制御
細胞周期は、**CDK(Cyclin-dependent kinase)と サイクリン(Cyclin)**というタンパク質のペアで厳密に制御されており、DNA損傷や環境ストレスにより一時停止(チェックポイント)されることがあります。
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AAV複製における律速となる可能性のあるヘルパー因子
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ChatGPT: はい、ご指摘のとおり、AAVの複製は単にアデノウイルス(AV)の存在だけでなく、AVが提供する特定のヘルパー因子の量や機能にも依存しており、これらが律速要因となる可能性があります。最近の研究では、AAV複製における律速因子の同定や、それらの機能に関する詳細な解析が進められています。
従来、AAVの複製にはアデノウイルス由来の以下の5つの遺伝子産物が必要とされてきました:
しかし、最近の研究では、E2A、VA RNA I、L4-22K の3つの遺伝子産物がAAV複製において特に重要であることが示唆されています。これらの因子の発現量や機能が不十分な場合、AAVの複製効率が低下する可能性があります。 Cell+1PMC+1
最新の研究動向
2024年の研究では、E2A、VA RNA I、L4-22K の3つの因子がAAV複製に必要十分であり、従来必要とされていたE4orf6 が必須ではないことが示されました。この研究では、これら3つの因子を含むヘルパープラスミドを用いることで、高効率なAAV生産が可能であることが確認されました。 Cell+1PMC+1
また、別の研究では、E4orf6 がAAVのトランスダクション効率を向上させることが報告されていますが、必須ではないとされています。
まとめ
AAVの複製は、AVの存在だけでなく、特定のヘルパー因子(特にE2A、VA RNA I、L4-22K )の量や機能に依存しています。
これらの因子が不足または機能不全の場合、AAVの複製効率が低下する可能性があります。
最新の研究では、これらの因子を最小限のヘルパーセットとして用いることで、高効率なAAV生産が可能であることが示されています。
今後の研究では、これらのヘルパー因子の発現量や機能を最適化することで、AAVの複製効率をさらに向上させることが期待されています。
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ChatGPT: はい、E2A、VA RNA I、L4-22Kの3つのアデノウイルス由来ヘルパー因子がAAV(アデノ随伴ウイルス)複製において必要十分であることを示した文献と、関連する特許情報が存在します。
関連文献
論文タイトル : E2A, VA RNA I, and L4-22k adenoviral helper genes are sufficient for AAV production in HEK293 cells 著者 : Jiten Doshi, Emma Couto, Jillian Staiti, Luk H. Vandenberghe, Nerea Zabaleta掲載誌 : Molecular Therapy – Methods & Clinical Development, 2024年11月13日発行、32巻4号、記事番号101376DOI : 10.1016/j.omtm.2024.101376 Liebert Publishing+11PubMed+11ResearchGate+11 PubMed+4Addgene+4Addgene+4
この研究では、従来必要とされていたE4orf6を除外し、E2A、VA RNA I、L4-22Kの3因子のみでHEK293細胞における高効率なAAV生産が可能であることを示しています。また、これらの因子を組み合わせたヘルパープラスミド(例:JD171)を設計し、安定したAAV生産が可能であることを報告しています。Addgene
関連特許情報
上記の研究に関連して、著者らは以下の特許を出願しています:
特許番号 : US6001650A
特許タイトル : High-efficiency wild-type-free AAV helper functions
出願人 : Avigen, Inc.
公開日 : 2000年12月14日
概要 : この特許は、野生型AAVを含まない高効率なrAAV(組換えAAV)生産のためのヘルパー機能を提供する方法と組成物に関するものです。Google Patents+1Addgene+1
なお、Doshiらの研究に関連する特許出願については、特許番号が明示されていないため、詳細な情報は確認できませんでした。しかし、論文中で特許出願中であることが示唆されています。
これらの情報は、AAVベクターの製造効率向上や製造コスト削減に寄与する可能性があり、今後の研究や産業応用において重要な知見となるでしょう。
ヘルパー因子の最適な比率
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ChatGPT: はい、Doshiら(2024年)の研究では、従来のヘルパープラスミド(例:pDeltaF6)と比較して、新たに特定された最小限のヘルパーセット(E2A、VA RNA I、L4-22K/33K)を用いた場合のAAV生産量の比較が報告されています。
発現量の比較
研究によれば、E2A、E4orf6、VA RNA Iの3つのヘルパー因子のみを用いた場合、AAV9ベクターの力価(genome copies per mL)は、pDeltaF6を使用した場合と比較して約7倍低下しました。しかし、E2A、VA RNA I、L4-22K/33Kの3因子を組み合わせた場合、pDeltaF6と同等のAAV生産量が得られました。これは、L4-22K/33KがAAV生産において重要な役割を果たすことを示唆しています。 Cell+1PubMed+1
さらに、各ヘルパー因子の量を変化させた実験では、E2A、VA RNA I、L4-22K/33Kの各因子を0.5倍量で使用した場合でも、1倍量と同等のAAV生産量が得られることが示されました。これは、これらの因子の発現量がAAV生産において重要であり、最適な比率での供給が必要であることを示しています。
まとめ
E2A、VA RNA I、L4-22K/33Kの3因子を用いた最小限のヘルパーセットは、従来のヘルパープラスミドと同等のAAV生産量を実現します。
各因子の発現量は、AAV生産効率に大きく影響するため、最適な比率での供給が重要です。
この研究は、AAV生産の効率化とコスト削減に貢献する可能性があり、今後の遺伝子治療の発展に寄与することが期待されます。
なぜAAVには組み込まれないのか?
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ChatGPT: いいえ、E2A、VA RNA I、L4-22Kの3つのヘルパー因子は、AAVウイルス粒子自体には組み込まれていません 。これらは宿主細胞に一時的に発現させる補助因子 であり、AAVゲノムやカプシド内に含まれることはありません 。
AAVはミニマルなウイルス
AAVベクターは安全性と治療効率を最大化するため、必要最小限の遺伝子(ITRに挟まれた遺伝子発現カセット)のみ を含んでいます。
RepやCapなどのウイルス由来遺伝子も排除 されており、ウイルス自体は複製・増殖できません(rAAV = recombinant AAV)。
ヘルパー因子の役割と導入の仕方
項目 内容 E2A / VA RNA I / L4-22K アデノウイルス由来の遺伝子産物。AAVの複製・構造タンパク質の発現・アセンブリを助ける 導入方法 AAVベクター製造時、**別のプラスミド(helper plasmid)**にコードされ、製造細胞(例:HEK293)に一時的にトランスフェクションされる AAVベクター中の構成 含まれるのは治療用遺伝子(transgene)とITR(Inverted Terminal Repeat)だけ 理由 治療用のrAAVベクターが患者体内で自己複製しない=安全性が高い という前提があるため、ヘルパー因子は排除される
AAV製造の三重トランスフェクション法における役割
ベクタープラスミド (transgene + ITR)
Cap/Repプラスミド (AAV自身の構造タンパク質など)
Helperプラスミド (E2A、VA RNA I、L4-22KなどのAV遺伝子)
このうち③が、AAVが複製・粒子化するために必要な補助機能を一時的に提供します。
まとめ
E2A、VA RNA I、L4-22KはAAV粒子には組み込まれません。
AAV製造時の細胞に一時的に供給される補助因子 です。
患者に投与されるrAAVベクターには含まれず、安全性確保の観点からも排除されています。
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Q: どちらの回答も甲乙つけがたい.
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もし次に掘り下げるとすれば:
rAAV製品における残留ヘルパー因子DNAの規制要件 (規格設定やICH Q5A等との関係)
Cap/Repの補助機能とAAV型依存性(例:AAV2 vs AAV9)
今後、自己複製可能なAAVベクター設計の倫理的・技術的議論
なども面白いと思いますが、何か気になる方向性はありますか?リサーチでも、図解でも、プラスミド設計の例でもお手伝いできます。
その他参考文献
リコンビナントアデノ随伴ウイルス(rAAV)、パルボウイルスの精製プロトコール
https://www.cosmobio.co.jp/support/technology/a/axs-20130617-1.asp
AAVanced Concentration Reagent
https://www.funakoshi.co.jp/contents/63833
編集履歴
2022/09/03, Mr. Harikiri 2025/04/21 大幅追記(with AI)