[IT] COVID-19でクローズアップされるVPN – 繋がらない日本の企業 – これからのICT投資が望まれる – ID13044 [2020/11/16] ID13044

日本の企業に足りないICTは、と聞かれた時、全てと答えざるを得ない。今回のCOVID-19から見えてきた当面の足りないICTと言えば、リモートワークでしょう。その観点から具体的に示すと以下の通りと考えます。

  • 端末としてのPC
  • ネットワーク回線の容量(バックボーン)
  • VPNサーバーの性能
  • 社内ルーターの性能
  • ネットワークケーブルの更新
  • SkypeからTeamsへの変更

社内ネットワークに繋がらない!?

COVID-19の緊急事態宣言が、発出されて在宅勤務が進められる中、Vertual Private Network (VPN)が社内に無い、あっても繋がりにくいなど、問題になっているようだ。

その根本原因は、ICTに投資をしていないためだ。Windowsにしてもそれを動かすPCにしても、これらはすべてアメリカのインフラを前提にしている。Cloudも然り、VPNも然り、全てのICTは、アメリカ標準である。

アメリカ標準のPCを使うのに、日本では、それに付随するインフラがアメリカ標準についていけるほど、ICTに投資をしていない。

その結果、VPNは繋がりにくい。

アメリカと日本のITC投資の格差

日本ではICTに対する投資は、中小企業はもちろん、大企業でもアメリカほど進んでいない。その累積額で言えば、全く進んでいないと言っていい。

総務省の2017年までの統計情報 (第2節 デジタル経済を支えるICTの動向)で示されているのが図1から図3です。米国、英国、フランスと比較しても日本の投資額が低いのが分かります。

GDPあたりのICT投資額について日米の比較(総務省)を見ると、ほとんど同比率となっている(図4)のだが、安心してはいけない。英国のGDPは、日本のGDPの60%程度しなないにもかかわらず、米国と同等の積極的なICT投資を継続している。2015年までで、英国および米国は、日本に比べて、約3倍の額をICTに積極投資している。

端的に言ってしまえば、英国は、国力は日本より低いものの、ICT投資に対して積極的に行なっている。

図1. 日本のICT投資額の推移
棒グラフは、毎年の投資額で、約30年の間で投資額は増えていないのが分かります。折れ線グラフは、ソフトウェア投資への割合ですが、その比率は増加しているということは、年々ハードウェアに対する投資は少なくなっていると言える。

図2. 米国のICT投資額の推移
ICT投資全体の総額は、今日まで約30年の間で積極的な投資が行われたことが分かる。

図3. 米国、英国、フランスおよび日本のICT投資額の推移の比較
米国と英国は、姉妹国であると考えていい。ICT投資のパターンは、ほとんど同等に推移している。フランスは、昔に繁栄した国との認識があるかも知れないが、日本は、そのフランスとですら、同等のICT投資の推移を示しているものの、近年、差を付けられている。

図4. 日米のGDPあたりのICT投資額の推移と比較
GDPあたりのICT投資額は、日米で同等である。

図5. GDPの比較
英国のGDPは、日本の60%弱である。

これから日本は、ICT投資を積極的にする必要がある

パラダイムシフト

今回のCOVID-19によって、日本では、パラダイムシフトが起こります。いえ、世界でこれまで通りに活躍するためには、パラダイムシフトを起こさなければなりません。世界でもパラダイムシフトは起こります。

ICTへの投資として、これまでは更新にしか行ってこなかったことを、機能アップにも行っていく必要があります。もしも、そうしなかったとしたら、世界から取り残されていくのは明白です。世界の国々は、ICTが必要であり、機能アップが必要であることを、既に理解しています。

付けは払わなければならない

日本でも2000年くらいには、ICTへの投資を叫ばれた時期がありました。しかし、景気の低迷、少子高齢化などに理由を付けて、ICTへの投資を維持はしてきたものの、積極的な投資はしてきませんでした。個々の企業のみならず、バックボーンとなる共通のインフラ関連もそうです。その付けは、これから数年間をもって、払わなければならないでしょう。

とるべき舵の方向

日本の大企業は、賃金を上昇を抑えて、内部留保を増やしていると言われまます。今後は、手段であるICTに対しても積極的な投資ができなければ、生き残りは厳しいと感がられます。グローバルでは、ICTを使った競争の激化が始まるからです。

VPNの拡張か? SD-WANか?

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VPN

VPNの技術のベースは、専用線を使わないで、公共のネットワークであるインターネットを利用して、サーバーとクライアント間で、「トンネリング」、「暗号化」および「承認」というプロセスが発生しています。

おおよそ、1つのVPNを担うサーバーに対して、繋ぐことが可能なクライアント数は、一般的なサーバーを設定した場合、200~500程度です。

  • Pentium 4, 2.8GHz, 1GB

VPNサーバーを拡張するには、マシン性能をアップすることが考えられますが、クラスタリングすることが最もスケーラビリティがあり、やりやすいと考えられます。

  • メモリー増設
    • メモリースワップ低減
  • キャッシュメモリー増設
    • 応答速度改善
  • クラスタリング
    • 同等のサーバーを追加による負荷分散
  • サーバーとクライアント数のバランス
  • ネットワークケーブルの劣化、規格(100, 1000)の適正使用とアップデート(同時にネットワーク機器の更新も必要)

SD-WAN

VPNの技術よりも、もっと優れたSD-WAN (Software Defined WAN : ソフトウェア定義型広域ネットワーク)というものがあります。速度は4倍高速です。

  • SD-WANの開設期間は短い
  • 速度はVPNの4倍高速
  • Cloudツールも使える
  • ソフトウェアを介してアプリケーションやツールの経路(ネットワーク経路)を一括管理
    • Office 365の通信のみに限定したり
    • 各拠点のエッジ装置から直接インターネットへ通信
    • センター拠点への過剰なトラフィックの集中を防止

Office365が遅い対策

  • ネットワークケーブル、ルーター
  • Excelの計算設定(GPU/CPU)
    • GPUは、画像処理、制御、演算や大きな計算に特化しているので、特殊なケースでは有利だが、起動に時間がかかる
    • CPUは、その他一般的計算に向いている。Excelの初期設定では、GPUになっているが、CPUにした方が早くなるケースもある
    • 設定は、ファイル → オプション→詳細設定→ハードウェアグラフィックアクセラレータ、で行う
  • Skypeは、音が途切れたりすることが多い。欧米ではすでに、Teamsという会議システムに移行しているようだ。日本でも移行しているのは少ない。Skypeは、one to oneの電話の代替から発展してきた経緯があり、多数を介した会議には力不足のようだ。Teamsへの移行が望まれる。

自宅のネット環境も確認

自宅で契約しているネット・プロバイダーのサイトに行って、ネットのスピードを確認してください。契約通りのスピード範囲に収まっているかどうか確認して、もしも、著しく速度が低い場合は、自宅のネット・ケーブルが不適切か、劣化の可能性があります。僕もこのような経験があります。ネット・ケーブルを交換したら敵面に3~5倍の速度アップができたのは驚きでした。

編集履歴
2020/04/09 はりきり(Mr)
2020/04/10 SkypeからTeamsへの移行について追記
2020/11/19 自宅ネット環境の確認

参考文献

2060年の世界および日本経済の行方 (2019)

https://www8.cao.go.jp/space/comittee/01-kihon/kihon-dai5/siryou2-1.pdf