[血液凝固因子] Fibrinogen – ID2549 [2023/10/23] ID2549

はじめに

Fibrinogen (フィブリノゲン)は,巨大分子であること,タンパク分解酵素に分解されやすいこと,などから遺伝子組換え技術による医薬品レベルの製造がコストを度外視しても難しいタンパク質である.

Fibrinogen

フィブリノゲンは、血液中にある血液凝固因子である。血液の凝固の最終段階に関与している.フィブリノゲンは血液中では溶けているが,出血時にトロンビンと言う酵素からある部位に切断を受ける事で巨大な部分分子同士が絡むことが可能となり、不溶性のFibrin (フィブリン)線維となり物理的に出血を止める.

検査

フィブリノゲンの検査は、血液凝固の異常や出血傾向を調べるために行われる.フィブリノゲンの正常値は、約150~400mg/dL.フィブリノゲンの値が高いと、血栓ができやすくなり、心筋梗塞や脳卒中などの動脈硬化性疾患のリスクが高まる.フィブリノゲンの値が低いと、出血が止まりにくくなり、貧血や出血性ショックなどの危険が高まる.

高値になる原因

  1. 炎症性疾患(感染症、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎など)
  2. 妊娠
  3. 喫煙
  4. 高コレステロール血症
  5. 糖尿病
  6. 肥満
  7. 避妊薬やホルモン補充療法の使用

低値になる原因

  1. 先天性低フィブリノゲン血症(遺伝的にフィブリノゲンが少ない状態)
  2. 後天性低フィブリノゲン血症(出血や消費性凝固障害(DIC)などでフィブリノゲンが減少する状態)
  3. 肝機能障害(肝臓でフィブリノゲンが合成されるため)
  4. フィブリノゲン製剤や抗凝固剤の使用

フィブリノゲン製剤

フィブリノゲン製剤とは、先天性低フィブリノゲン血症や産科危機的出血に伴う後天性低フィブリノゲン血症に対する治療薬.人の血液のプラズマ成分から精製されたフィブリノゲンを医薬品としたもの.点滴静注で投与される.

立体構造

下図に示すようにAα鎖,Bβ鎖およびγ鎖の3本のタンパク質が絡まった構造で真ん中にEドメインと呼ばれる球状部分と,両端にDドメインと呼ばれる小球状部分で,コイルドコイルという棒状部分で連結された構造を取っている.

Aα鎖とBβ鎖のN末端には、それぞれフィブリノペプチドAとフィブリノペプチドBという小さなペプチドが付いいる.これらのペプチドはトロンビンによって切断されると、フィブリノゲンはフィブリンに変化し、重合反応を起こす.

  • Fibrinogen 3D structur : PDB

文献

Fibrinogen:

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jat1973/23/9/23_9_505/_pdf/-char/ja

低フィブリノゲン血症の患者数:

https://www.shouman.jp/disease/details/09_22_037/

フィブリノゲン – QLIFE –

フィブリノゲンとは|病気の検査法を調べる – 医療総合QLife

3. 血液凝固因子の分子進化 – フィブリノーゲンとvon Willebrand因子を中心に – 2008, 決戦止血誌

日本血栓止血学会誌 第19巻 第2号 (jst.go.jp)

編集履歴

2019/10/14, Mr.Harikiri
2023/10/23, 追記