[Bio-rAAV] アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターを使用する意義(特徴)と製造概要 – ID1862 [2019/09/06] ID1862

ID1862

rAAVベクターの特徴

遺伝子がランダムに導入される理由を掘り下げて調査した。

  1. 導入目標: レトロウイルスでは分裂細胞にしか遺伝子導入できないが,AAVでは,分裂,非分裂を問わず導入可能で長期発現が可能
  2. 免疫原性: センダイウイルス,ヘルペスウイルス及びアデノウイルスが免疫原性が高いのに対して,AAVは低い
  3. 遺伝子毒性: 正常遺伝子導入の際、ベクター配列が染色体に入ること、正常遺伝子が組み込まれる位置の制御できないため、癌遺伝子近傍に入るとがん化の可能性がある(文献1, p.20)、また、文献2には、宿主の染色体にランダムに遺伝子が導入されるため,レトロウイルス,レンチウイルスと同様に遺伝子毒性がある (現状での技術面の成熟が期待される)
  4. 1997年現在では、野生型AAVが持つ染色体第19染色体の長腕(q13.4-ter)への特異的な遺伝子導入は、組換え技術で作ったAAVベクターで特異的な部位への遺伝子導入は達成できない(文献4)。
  5. 特定部への遺伝子導入制御方法に関する特許は、2008に公開されている(文献5)ので、この時点で、染色体の特定部位への遺伝子導入は難しい技術であったことが伺える、1997年では、その技術はなかった可能性がある。
  6. 上記の最近の文献でもランダム導入などの記載があり、野生型AAVの特異的に特定の部位に遺伝子を導入できるまでには至っていないものと考えられる(今後も調査予定)。
  7.  臨床計画書を見ると、rep遺伝子は使われないようだ。すなわちランダムに遺伝子が組み込まれる。
  8. 細胞毒性: 細胞毒性が低いとされるレトロウイルス,レンチウイルスなどと比較しても,細胞毒性はほとんどない
  9. 大量調製が容易
  10. 治験応用実績: 血友病,パーキンソン病,Leber先天性黒内障
  11. 投与経路: 全身投与により大量投与が可能

rAAVのメリット

  1. 拡散防止措置P1施設で取り扱う
  2. 増殖/非増殖のいずれの細胞にも遺伝子導入が可能
  3. 非増殖性の細胞での長期発言
  4. 免疫原性が低い

rAAVベクター製造

  • プラスミドベクター製造
    • AAV ssDNA(pAAV-GOIvector)
      • pAAV CMV Vector
      • pRC Vector
      • pHelper Vector
  • ウイルス作成細胞(HEK293/Tなど) Cell Bank製造
  • プロセス開発
    • 培養
      • Transfection条件(細胞濃度とプラスミドベクターの比率)
    • 精製
      • 抽出法
      • カラム精製
      • UF/DF
  • non-GMP ウイルスベクター製造
  • 非臨床試験
    • in vivo実験(1012 vg/mL)
  • カルタヘナ申請
  • GMP ウイルスベクター製造

参考

文献

  1. TAKARA: catalog.takara-bio.co.jp/research.htm
  2. 経済産業省: https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/genome/advisory_board/dai5/siryou4-2-8.pdf
  3. 平成27年7月24日、国立医薬品食品衛生研究所: http://www.nihs.go.jp/oshirasejoho/symposium/documents/H27_suraido_3.pdf
  4. https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-08672600/(1997)
  5. 公開特許公報(A)_アデノ随伴ウイルスのITRをもつDNAのヒト第19番染色体への組込み部位の制御方法(2008): https://biosciencedbc.jp/dbsearch/Patent/page/ipdl2_JPP_an_2006263018.html
  6. 遺伝子治療臨床計画書(2017) – rep遺伝子を欠いているためAAVS1へは導入されずランダムに組み込まれる(p.14): https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000186212.pdf

編集履歴

2019/09/06 はりきり(Mr)
2019/09/14 追記 (文献3, 4追加)
2020/04/28 文言整備